北野武監督 暴力描写や銃撃シーンの工夫と新たな撮影手法を明かす
[シネママニエラ]北野武監督が初めて手掛けた続編映画としても話題の本作。ヤクザの抗争を主軸に、その抗争を利用して組織の壊滅を企むマル暴刑事(警察)のせめぎ合いを描く。
北野監督は「前作『アウトレイジ』は、キャラクターの死に様を考えてから物語を作りあげたけど、本作では常に裏をかくためにストーリーをひねった。これほどの豪華キャストが勢揃いにも関わらず、キャラクター同士の役割分担がうまくいったのは相関図を用いたから。実は台本を撮影ギリギリまで手直しして当初よりちょっと長くなったんだ。男だらけの物語で、いろいろ複雑に絡み合ってはいるんだけど、台詞で補ってるから前作を見ていなくても十分楽しめると思う」と語る。
暴力描写はあくまでフィクション
静寂と暴力描写を内包させる北野映画は、やはり観る者を引きつける。加瀬亮は、そういう北野映画に魅了されたひとり。
「僕は北野監督の映画『ソナチネ』を初めて劇場で観て、とにかく観たことがない世界観と、出来事は激しいのに静なる世界が広がっているという感触が不思議で衝撃を受けたんです」
そして、北野監督は本作で映像ならではのリアリティを追求し工夫したという。
「あまりに『暴力、暴力』と前作は直接的な描写についての話題が多かったんで、今回は逆、つまり違った撮り方をしようと思ったわけ。例えば因数分解みたいに、死体を囲うように映す。例えばAという人物とXYZ たちの銃撃シーンだとする。Aが一人ずつ撃ったとすると、(A×X)+(A×Y)+(A×Z)になる。でもAが発砲したら次にカメラが映すのはXの死体ではなくて、周りのXYZが全員もう倒れている。A(X+Y+Z)というふうに括弧ちゃう。同時に拳銃の発砲も少なくなるんだけど、拳銃を撃つ際の描写は歌舞伎のような様式美を意識もしたかな」
さらに本作では新たな試みがなされていると北野監督が明かした。
「暴力描写はあくまでフィクションだからね。殴り合いは、今のハリウッド映画でもそうだけど、映画における格闘のための演出になっている。素手で殴り続けるのはリアルではないから1発殴って決めたいけど、1発だと画(え)にならない。そこであまりやったことがない手法、ジェットコースターみたいにイッキに見せることにしたんだ」
あまりやったことがない手法を選んだのはテレビ視聴に慣れている観客への配慮だ。お笑い番組にさえ吹き出しテロップが必要な時代なので、映画でもすべて台詞にしないと観客に伝わらないと考え、「役柄が分かるようにすべて台詞にした」という。その結果、台詞数に比例してカット割りが増え、長回しが使いにくくなったというのだ。
こちらのインタビューは、
北野武監督&加瀬亮『アウトレイジ ビヨンド』直撃インタビュー【後編】に続きます。ぜひ前後編あわせて、お読みください。
映画『アウトレイジ ビヨンド』予告編
©2012 「アウトレイジ ビヨンド」製作委員会
日本公開=2012年10月6日
配給=ワーナー・ブラザース映画/オフィス北野
©2012 「アウトレイジ ビヨンド」製作委員会
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