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映画『ワイルド』ニコレッテ・クレビッツ監督 美女とオオカミの禁断のラブストーリーに込めた思い

映画インタビュー

CG全盛の最近の映画界の中で、美女とオオカミの禁断のラブストーリーを捉えた映画『ワイルド わたしの中の獣』は本物のタイリクオオカミで撮影に臨み、サンダンス映画祭やロッテルダム映画祭など各映画祭に出品され大きな話題となった。女優で監督のニコレッテ・クレビッツが、同作についてインタビューに応じた。

Nicolette Krebitz|ニコレッテ・クレビッツ
Nicolette Krebitz|ニコレッテ・クレビッツ © 2014 Heimatfilm GmbH + Co KG

映画『ワイルド』ニコレッテ・クレビッツ監督 美女とオオカミの禁断のラブストーリーに込めた思い

 私は映画『ワイルド わたしの中の獣』で皆さんに「経験」を提供したかったの。大抵、他の似たような系統の映画では自然に還るということは何らかの罰を与えられたりしますから。コントロールが無くなった状態というのは、すごく怖いのです。けれど何かに縛られない、制御されないというのは良いことなんです。私はそれを体感できる映画を作りたかったのです。

 物語の着想は自分自身の夢から思いつきました。何かに後ろを付けられているなという夢を何度か見て怖かったし、混乱しました。それで夢の中で後ろを振り向いてみたらそこに“オオカミ”がいたのです。そこから着想を得て、自分の住む世界というものを改めて考えてみました。そして、映画を撮影するのに困難な今回の設定をあえて選びました。

 もう一つ理由があって、ちょうどその頃、オオカミがポーランドの国境を越えてドイツに来ているというニュースがありました。ドイツからはオオカミが消えて100年以上経っています。彼らはすごく魅力的な動物だと思います。上手く環境に慣れる、順応できるという点ではある意味人間に近いですね。だから自分たちの習性を長年変えずにここまで生息できたのです。野生を捨てずに来た、つまり‘自由’を手放すということはなかったのです。そのオオカミ達がドイツという都会に戻ってきた。丁度そのタイミングで夢をみましたから、そこがこの話の骨格になりました。

女優リリト・シュタンゲンベルク、映画『ワイルド わたしの中の獣』より
リリト・シュタンゲンベルク © 2014 Heimatfilm GmbH + Co KG

 主演女優リリト・シュタンゲンベルクとは、かなり話し合いました。キャスティング・オーディションで彼女は自分の番になった時に、すぐに本作の役柄について話し始めました。命が危うい状況に身を置くというところから説明を始めました。彼女は本作が自分を解放する唯一の機会だと分かっていましたし、私が何も言わなくてもすごくやる気がありました。ですから、彼女とは演出上のやりとりをするだけで、とくに具体的なアドバイスはしませんでした。状況を与えて、それにどう対応するかが俳優の仕事ですよね。私は彼女に恐れを感じてほしくなかったのです。リリトは本当に危険に身を晒していましたが、同時にオオカミに自分自身をすべてさらけ出していました。本当に彼女にとってオオカミは“恋人”という感じでしたね。

映画『ワイルド わたしの中の獣』(Nicolette Krebitz|ニコレッテ・クレビッツ監督)
© 2014 Heimatfilm GmbH + Co KG

 そしてオオカミは、ハンガリーに行っていくつかのグループの中から選びました。オオカミもそれぞれ得意な能力や性格が異なっているので、本作に合っているか適正も確認しました。今回のオオカミは見た目が美しいのとリリト(主演女優)との顔の相性がいいという点で選びました。トレーナーに育てられたネルソンという名前のオオカミです。演技経験もあってCMなどに出演していましたし、群れのリーダーでしたので、それら7匹のオオカミは全部撮影所に連れてこられ、ネルソンは撮影が終わるたびに毎回その群れの檻に戻しました。

 生きたオオカミで撮影するにあたり、主役のリリトは撮影前の3週間ハンガリーに行き、オオカミトレーナーの元で指導を受けました。そのトレーナーを呼び寄せて、オオカミとの撮影はどこまでが可能なのかを色々と相談し、実際には安全を確保して撮りました。撮影は全部28日間、1日の撮影は10時間くらいで、その内オオカミの撮影は15日間で1日3~5時間でした。

映画『ワイルド わたしの中の獣』(ファインフィルムズ配給)は2016年12月24日[土]より新宿シネマカリテほかにて公開中
© 2014 Heimatfilm GmbH + Co KG

 オオカミはあまり長く檻から出しておけません。オオカミと上手く撮影する秘訣は、オオカミをそこそこお腹いっぱいにしておくことです(笑)。舐めるという動作ではフォアグラを利用したり、リリトの後を付いていくシーンではポケットに肉片を忍ばせて少しずつ落としていったりしました。基本的にエサにつられればなんでもやりますね。しかし、オオカミは絶対に自由になる機会を見逃さないのです。もし檻の扉を少しでも長く空けていたりすれば、その隙に出て行って二度と帰ってこないでしょうね。犬とは違います。そもそも人を喜ばせようとは思ってないですし、どうでもいいんですよね。そこが彼らの魅力でもあります。だからリリトは本当に危険に身を晒しながら撮影をしていました。


世間のルールに逆らった女性があらゆる制約から解放されたとき魅惑的で官能的な世界へと踏み出していく……。

映画『ワイルド わたしの中の獣』予告編

©2014 Heimatfilm GmbH + Co KG

Nicolette Krebitz|ニコレッテ・クレビッツ

1971年ドイツ生まれ。ドイツの女子刑務所でロックバンドを結成した4名の女性の友情を描いた音楽青春映画『バンディッツ』で美女のエンジェルを演じるなど数々の作品に出演。2000年からは監督や脚本も手がけるようになる。

映画『ワイルド わたしの中の獣』(ファインフィルムズ 配給)は2016年12月24日[土]より新宿シネマカリテほか公開
R-15(15歳未満は見ちゃダメ)

映画『ワイルド わたしの中の獣』公式サイト
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