コリン・ファースが映画化を熱望した感動の実話、映画『ラビング 愛という名前のふたり』のメガホンをとったジェフ・ニコルズ監督が語った。本作は、1950年代のアメリカ合衆国バージニア州を舞台に、異人種間の結婚が違法とされ、自らの愛を貫き通すべく戦ったリチャード&ミルドレッド・ラビング夫妻の物語。
「ラビング夫妻を見た時、僕が本当に心惹かれたのは、彼らが政治にまったく関心がないことだった。少なくとも、この2人を人間としてきちんと描けていると思っているし、それが僕にとって重要なことだった。
最初は怖かったし真摯(しんし)に考えた。実在の人物の残したものを取り上げるような映画を撮ったことがなかったから。そのキャラクターの描き方次第で、ご家族が不快に感じられることがないようにすることは非常に大切なことだった」
「この映画は平等な結婚という問題と関係ない人々、つまり人種問題の向こう側にいる人々にも届く可能性があるという点だ。自分たちが信じていないことについて説教される映画を見に行かないだろう。僕たちが彼らの信念やシステムに賛同するかどうかは別として、こういう人々は、同性愛婚に対して固い信念を持っている。少なくとも、アメリカにはそういう人は数多くいる。
こういった人々にも作品を届ける唯一の方法は「ある話題について、あなたが間違っていると声高に叫ぶのはやめよう。ただ、ある2人の人間がお互いに純粋な愛情を持っていたことを伝えよう。2人のことを人間として知ってほしい。この物語の陰にある人間性について知ってほしい。あなたの考え方ももしかしたら変わるかもしれない」というメッセージを伝えることだ。たぶん変わらないだろうけど、変わる可能性もある」
「だから、映画の物語の構造を守るのは、とても重要なことなんだ。全てのことを映画に含める必要はない。公民権運動を描いた映画を作るつもりはないし、実際に起こったすさまじい法廷での争いを描いた映画を作るつもりもない。それとはまったく別のことを描きたかったんだ。彼らが自分の望むように生きられないという事実に胸が張り裂けそうだった」
映画『ラビング』ジェフ・ニコルズ監督「行動を起こしたことが重要」
「ドキュメンタリー作家ホープ・ライデンが作った実録映像のオリジナル版のなかで、リチャードに「裁判の結果について話してほしい」というシーンがある。そこで、リチャードは「ああ、そうだなあ。彼女はこの手紙を書いたのさ。誰宛てに書いたんだっけ?」って言うんだ。するとミルドレッドが「ロバート・ケネディよ」と答えると、「ああ、そうだった。彼宛てだ」と言う。それが演技ではないことは見ていてわかる。彼らは小細工をして、何かを手に入れようなんて考えていなかった。
制作の初期の段階から、できる限りリチャードとミルドレッドの視点から映画を作ろうと決めていた。つまり、映画の構成も、トーンも、シーンのスタイルもすべて、この2人の人柄を反映したものになるということだ。当然、僕が創作した部分もあるので、実際に起こったかどうかわからないシーンもあるが、彼らの人柄を理解し、彼らの本質的な部分から外れることがないように努力した。派手さのないとても静かな映画で、それはラビング夫妻そのものだと思う」
「当時の彼らは、自分たちの目の前で起こっていることが、どれだけ長く影響を及ぼすか理解していなかったんだ。この作品については自分の作品としてはあまり自慢できないと思うんだ。映画全体としては自分の手柄とすることもできるけど、ストーリーに関してはね。だって、これは僕が考えたものではなく、彼らに本当に起こった物語なんだ。重要な事をしたのは彼らの方で、彼らが行動を起こしたことが重要なんだ!」
映画『ラビング 愛という名前のふたり』(ギャガ配給)は2017年3月3日[金]よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
映画『ラビング 愛という名前のふたり』公式サイトhttp://gaga.ne.jp/loving/
公式SNS Twitter | Instagram | facebook
※こちらの記事は復刻・再現版です。
【関連記事】
ラビング 愛という名前のふたり(原題 LOVING) – 映画予告編
予告編で観る!今週の映画ランキング
映画公開カレンダー2016年11月
映画公開カレンダー2017年