ラジオドラマ「~松山ロシア人捕虜収容所外伝~ソローキンの見た桜」(南海放送)が、構想10年を経て映画化される事が決まり5月21日、在日ロシア連邦大使館にて映画『ソローキンの見た桜』製作発表会見が行われた。この会見には日本人キャストの阿部純子、イッセー尾形、井上雅貴監督、田中和彦氏(原作者/南海放送社長)、ミハイル・ユリエビッチ・ガルージン駐日ロシア大使らが登壇した。
同ラジオドラマは「第1回放送文化大賞グランプリ作品」を受賞しており、日露戦争のさなか、愛媛県松山に設置された「捕虜収容所」を舞台に、日本女性とロシア軍少尉の捕虜とが織りなす愛が描かれていく。戦争の真っ最中にハーグ条約に則り、当時松山の人口は3万人で5人に一人がロシア人という割合で2年もの間トラブルなく共生していたという。今でも墓所を清めていることも、あまり知られていない事実だろう。
本作の主演は河瀬直美監督『2つ目の窓』主演で知られる阿部純子。日露戦争時を生きた女性・ゆいと2018年を生きる駆け出しのテレビディレクター・桜子と1人二役に臨む。最近は『孤狼の血』『海を駆ける』などの注目作に続けて出演しており、本作で初のロシア渡航となる。「責任重大です」と大役に緊張感をにじませつつも、未来の大物女優を予見させるような清々しさを垣間見せた。
相手役のソローキンに扮するのはロシアの演技派イケメン俳優ロデオン・ガリュチェンコ。彼からは「忘れられない大事な経験になると思います」などのコメントが寄せられた。
本作品を全面的にバックアップするロシア政府の厚意もあり、日本映画史上初めて、ロシア連邦大使館にて記者会見が開催された。今週末に、文化・経済・青年交流をはかっていく「日露交流年」の開幕式をモスクワのボリショイ劇場にて開催される予定という絶好のタイミングに、この映画の製作が発表された。撮影は来月に松山ではじめ、7月は場所を移しロシアのサンクトペテルブルクで行われるという。
この会見に出席した、ロシア交流会の代表は(スパイの)『ゾルゲ』シリーズや黒澤明監督のソ連・日本合作映画『デルス・ウザーラ』といった作品を例にあげて、「素晴らしい映画が新たにうまれることを確信しています」と本作にエールを送った。
そして、尾形は自ら役衣装で会見に臨むと決めたという。「日本はやはり桜の国。その桜の向こうに隠されるように包まれた世界」をこの日上映された本作のプロモーション映像から感じ取ったと言い、「捕虜の人権をどこまで尊重するのか日々悩んだと思います。そういう苦悩やジレンマをいっぱい体験したいと思います」と話した。本作にはほかにロシアの国民的俳優アレキサンドル・ドモガロフ(偉大なる軍人オズマン大佐役)、山本陽子(桜子の祖母役)、斎藤工(主人公の上司役)、六平直政らベテラン、個性派のキャストが脇を固めている。
メガホンを執るのは、全編ロシア語のSF映画『レミニセンティア』の井上雅貴監督。井上監督は、アレクサンドル・ソクーロフや石井岳龍に師事した逸材であり、会見の合間にはロシア大使ともがっちり握手を交わし、「自分のできる力をすべて注ぐ」と抱負を述べた。
映画『ソローキンの見た桜』(KADOKAWA+平成プロジェクト 配給)は2019年春に全国公開予定
© 2019 ソローキンの見た桜製作委員会
映画『ソローキンの見た桜』公式サイトhttps://solokin-movie.com