松本穂香主演『君が世界のはじまり』青春はダサくても痛くてもいい
女優の松本穂香が、ふくだももこ監督最新作『君が世界のはじまり』で主演をつとめることがわかった。松本は「青春時代って、一瞬すぎる。過去があって、今がある。ダサくても痛くてもいい。だから伝わるものがある。そんな気持ちでこの作品に挑みました」と話す。
ふくだ自身が執筆しデビュー作ながら集英社・すばる文学賞佳作を受賞した小説「えん」と「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」を、『リンダリンダリンダ』『聖の青春』『愚行録』など、数々の話題作を手がかける脚本家、向井康介が一つの物語に再編した。
若手最注目株の一人として活躍の幅を広げる松本が、閉鎖された地方に生きる高校生2年生の少女・えんを等身大の魅力で演じる。ふくだ監督と松本は、映画『おいしい家族』に続くタッグとなる。
映画『君が世界のはじまり』(バンダイナムコアーツ 配給)は2020年夏よりテアトル新宿ほか全国公開
青春時代って、一瞬すぎるからなのか、どこか記憶がぼんやりしている。大切な瞬間が溢れてたはずなのに、記憶が抜け落ちてる。だけど、多分、その時感じた切なさやあたたかさは、ずっとずっと心の中に感触として残ってるんだと思う。恥ずかしいぐらいまっすぐだった私たち。過去があって、今がある。私たちはずっと、何かに向き合いながら、苦しみながら生きてきた。そんな当たり前のことに救われる気がする。だから大丈夫。私たちは大丈夫。 ダサくても痛くてもいい。だから伝わるものがある。そんな気持ちでこの作品に挑みました。
「君が世界のはじまり」のもとになった小説「えん」と「ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら」は、私にとって、どうしようもなく特別な物語だ。
“青春”という箱の中に入れられるのを嫌悪していたあの頃の、胸を突き抜けて飛び出しそうなエネルギーが、すべての登場人物に詰まっている。この映画が、どこへも行けない、何にもなれない、そんな風に思っている誰かの、はじまりのきっかけになればいいと願っています。
私が書いた、ゴツゴツトゲトゲした岩のような小説を切り取り、石にして世に出してくれた人がいて、手に持てるよう丁寧に削ってくれた向井康介さんの脚本があって、一緒に磨いてくれた素晴らしいスタッフと、松本穂香をはじめとする、才能ある俳優たちがいる。すべての人の力を合わせて「君が世界のはじまり」は、誰も見たことのない、燦然と輝くたったひとつの宝石になった。どうかこのきらめきが、あなたの心を照らしますように。
40歳を越えて、もう青春映画を書くことはないと決めていた矢先に、佐々木史朗さんとの出会いがあり、“ふくだももこ”という若い作家の短編小説を知りました。二十代の書く文章に自分はもうついていけないだろうと思っていたのに、驚くほど心の中に入ってくる。なぜなのだろう? そんな疑問から、僕の中でこの企画は始まりました。
「ふくだ、君が晩年になって、人が作品を振り返ったときに『ふくだももこの初期の代表作と言ったらこれしかないよね』とみんなが肯くような映画にしよう」
何度目かの打ち合わせのあと、居酒屋で僕はふくだにそう言ったのを覚えています。とても小さな物語だけれど、この映画が生まれる一助を担ったひとりとして、本当にそんなふうに語り継がれるような作品になってくれたら嬉しいです。
映画『君が世界のはじまり』あらすじ
大阪の端っこのとある町。深夜の住宅地で、中年の男が殺害される。犯人は高校生だった。この町の高校2年生のえん(松本穂香)は、彼氏をころころ変える親友の琴子と退屈な日々を送っていたが、琴子がサッカー部のナリヒラ君に一目惚れしたことで、二人は徐々にすれ違うようになっていく。同じ高校に通うジュンは、母が家を出ていったことを無視し続ける父親に何も言えぬまま、放課後ショッピングモールで時間をつぶす。ブルーハーツを聴きながらふと通りかかった屋上で、東京から転校してきた伊尾と会い、求めるものもわからぬまま体を交わすようになる。偶然ナリヒラ君の秘密を知るえん。急接近した二人を見て見ぬふりをする琴子。琴子に思いを寄せる、サッカー部キャプテンの岡田。思いの捌け口を見つけられないジュン。田舎に閉じ込められた自分と義母を重ねる伊尾。変わらない町―。そんなある朝、父親殺しの犯人が逮捕され……。
原作・監督:ふくだももこ 『えん』『ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら』
脚本:向井康介 企画制作:オフィス・シロウズ 製作:バンダイナムコアーツ、アミューズ、オフィス・シロウズ
主演:松本穂香
映画『君が世界のはじまり』イメージ映像
©2020『君が世界のはじまり』製作委員会
映画『君が世界のはじまり』公式サイト kimiseka-movie.jp
「おいしい家族 [Blu-ray]」をAmazonで購入する
映画『聖の青春』は天才棋士・村山聖(むらやま さとし)さんの生涯を描く
妻夫木聡、映画『愚行録』は確実に心に何かの傷跡を残す作品