映画字幕翻訳家の戸田奈津子と菊地浩司が10月2日、東京・六本木アカデミーヒルズで行われたトークイベント「戸田奈津子さんと語るハリウッドビジネスの英会話」に出席し、英語上達のコツは「語彙力とイディオム」にあることなどを語った。菊地が編み出した学習法「K-メソッド」を用いた英会話レッスン「東京バイリンガルサービス」の開業を記念して行われた本イベント。菊地は「ビジネス英語は交渉して相手を納得させること」という。
イメージガールをつとめるモデルの加賀美レイナは日×加のハーフであり、日×英のバイリンガル。この日は海外に滞在のためビデオレターで参加。いまでこそバイリンガルだが、実は「16歳まで英語は流暢に話せませんでした」と明かし、いかに学んだのかを語り、その結果「英語が話せると世界が広がります」と希望に満ちたメッセージを寄せた。
戸田奈津子×菊地浩司「英語上達のコツは語彙力とイディオム」
戸田は、俳優の故ロビン・ウィリアムズさんの私的な追悼式(マスコミ非公開)に列席したことを明かし、米サンフランシスコより帰国したばかりで時差ボケだというが、経験談、失敗談なども含めて約1時間半に渡って来場者に語り掛けた。最近タップダンスを始めたことを菊地に暴露されて、照れていた戸田だが、「バタバタするだけで、床がかわいそう」と自虐気味に語る。「運動は苦手だけど、音楽があるから楽しめる。好きなものはいろいろ知りたくなる」という好奇心が若さを保つ秘訣の様子。
英語に関しては「終戦後に占領軍によってアメリカ文化が流入。映画という新しい文化に触れて子ども心にカルチャーショックを受けた。テレビのない時代で、映画『荒野の決闘』『黄金狂時代』などをバラック(の建物)で満員で扉が閉まらないほどの環境で観た。私の場合はまず映画が好き。で、英語はボーナスみたいなもの。基本的な文法は学んだけど、耳と口を使う機会はなかった」という。
通訳の仕事を始めたきっかけはユニークだ。「当時の翻訳家は男の世界。女性の翻訳者は存在しなくて、映画会社で英文タイプのアルバイトに就いた。映画関係者の来日が急に決まり、故・水野晴郎さんが宣伝部長で『タイプができるなら通訳を』という指示で、通訳を経験した初めての仕事が記者会見!(苦笑)」というエピソードを披露。
その結果は「メタメタでした。クビを覚悟したけれど、次も通訳を任された。その決め手は英語力ではなくて映画の知識があったこと」だと分析。戸田は、名門の津田塾大学出身だが「今の映画館はほとんどが入れ替え制だけど、当時は3本立てで入場料100円ぐらい、大学時代の4年間はほとんど映画館で過ごした」という実体験で身に着けた知識が役だったのだ。
そこから「まず単語とか語彙力をつけること。そして英語特有のイディオムを多く知ること」という学習の秘訣を語った。「会話は実践が一番。生きた英会話では難しい語や文法は使わない。日本人は真面目過ぎるのよ。だから魅力的な異性のことを【sexuality】と言ってしまう。でもネイティブなら【turn on】を使うの」と具体例を挙げて、客席をうならせた。
「東京バイリンガルサービス」は11月4日[火]よりレッスン受付開始
公式サイト www.bilingual-s.tokyo
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