[シネママニエラ]第27回東京国際映画祭が10月31日に閉幕した。授賞式を兼ねたクロージングセレモニーでは審査員によって各賞の発表と講評が述べられた。
本年のフェスティバルミューズである中谷美紀が「コンペ作品15作品をすべて見させていただきましたが、同じ日本の女優として『紙の月』宮沢りえさんの女優賞に期待しています!」とエールを送ったこともあり見事、宮沢が最優秀女優賞を受賞した。午前中に発表された観客賞と併せ『紙の月』は2冠となった。
韓国の映画監督イ・ジェハン審査員は「意味深い、奥深い演技。卓越した精神。繊細な脆さの表現。表情だけですべてを語る演技力。彼女の芸術貢献に感謝します。そして言葉に表せないほど美しい方」と宮沢の演技を称えた。
宮沢は予想外の受賞だったようで「Thank you very mucn!」と快活に第一声を発したが、言葉が続かない。「ひゃー、なんか震えています。おみくじで大吉を引いたときの『ヤッター!』という気持ちと自分を引き締めなきゃという気持ちに似ています。7年ぶりの映画主演ということで不安もありましたが、吉田(大八)監督の粘り強い、厳しい、愛のこもった演出により、主人公の梅澤梨花という手ごわい役を乗り越えられたと思っています。このトロフィーを半分に分けることができるなら、その半分を最優秀演出賞として、私から監督にあげたいくらいです」と心境と感謝を表現。そして「公開前に国際映画祭ですばらしい賞をいただくことができ、大変うれしく思っています。これを励みに、すばらしい公開日を迎えることが出来るよう頑張りたいと思います」と瞳を輝かせた。その後、客席の吉田監督とハグをする姿も大々的に捉えられた。
吉田監督は、受賞者会見において「彼女自身が賞をもらうことに驚いていましたね。いつもスピーチが上手な方ですが、今日は緊張されているのがわかりました」と語っていた。前述の「トロフィーを半分に分けることができるなら」について問われると、「あの時は監督賞の発表前でしたので、もし自分が監督賞を得られたら、(宮沢さんに)同じ言葉を送ろうと思っていましたが」と茶目っ気たっぷり。
東京グランプリ及び監督賞に輝いた 映画『神様なんてくそくらえ』のご一行は喜びを言葉とポーズで表現。受賞者会見では、物語のモデルでありヒロインを演じたアリエル・ホームズが「ニューヨークのホームレスだった自分が今こうして皆さんの前にいることが信じられません。作品の中につめたメッセージをぜひ受け止めてください。世の中にはいろいろな生き方があり命はすべて尊いということ。人それぞれの声があるので、その声に耳を傾けてもらいたいです」という訴えが強く印象に残った。
◆コンペティション部門
・東京グランプリ
『神様なんてくそくらえ』監督:ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ
原題=HEAVEN KNOWS WHAT
© HARDSTYLE LLC
・審査員特別賞 『ザ・レッスン/授業の代償』監督:クリスティナ・グロゼヴァ、ペタル・ヴァルチャノフ
・最優秀監督賞 ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ 『神様なんてくそくらえ』
・最優秀女優賞 宮沢 りえ 『紙の月』
・最優秀男優賞 ロベルト・ヴィエンツキェヴィチ『マイティ・エンジェル』
・最優秀芸術貢献賞 『草原の実験』監督:アレクサンドル・コット
・観客賞 『紙の月』監督:吉田 大八
・WOWOW賞 『草原の実験』 監督:アレクサンドル・コット
◆アジアの未来部門
・作品賞 『ゼロ地帯の子どもたち』監督:アミールフセイン・アシュガリ)
・国際交流基金アジアセンター特別賞 ソト・クォーリーカー監督 『遺されたフィルム』
◆日本映画スプラッシュ部門
・作品賞 『百円の恋』 監督:武 正晴
・スペシャル・メンション 『滝を見にいく』 監督:沖田 修一
◆SAMURAI“サムライ”賞
北野武(監督)、ティム・バートン (監督)