[シネママニエラ]2012年、「踊る大捜査線」シリーズの本広克行が総監督としてオリジナルアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス」を手掛け話題となった。1期、新編集版、2期とテレビ放送を終え、2015年1月いよいよスクリーンに登場する。「普段アニメは見ないから」と敬遠するのはもったいない! 「萌え」一切なしの大人アニメを見てみませんか?
◆世界観は『ブレードランナー』
「PSYCHO-PASS サイコパス」は近未来を舞台に、都市の治安を守る刑事たちの群像劇。
近未来SFではあるがロボットや超能力のバトルではなく、パトカーで現場に向かい、犯人と対峙する。激しいガンアクションではなく頭脳&心理戦がメイン。文字にすると近未来SFな感じはしない。それもそのはず本広総監督は「泥臭い往年の刑事ドラマをベースにした」と語っている。また、全体設定はフィリップ・K・ディック作品に寄せてあると言い、近未来的な世界観の中にアナログな部分が混在。「近未来でもまだこの機能は残っているのか」などの細かな設定も楽しめる。
◆「正義」はどこにある?
本作の世界は、<シビュラシステム>と呼ばれる人間のあらゆる心理状態が数値化され管理されている社会。人々が幸福な人生を送れるよう支援するシステムという体で導入された。しかし、罪を犯していないが犯す可能性のある人間(潜在犯)を「数値だけで判断」し、裁くことに疑問を抱く刑事・常守朱。テレビシリーズで、シビュラシステムが「特殊な人間の脳の集合体」であると知り嫌悪するが、彼女は現社会にはこのシステムが必要だと理解しているため、この世界の正義に従いつつ、捜査は自身の直感や倫理・道徳からくる人間らしい正義のもとに行動する。
常守の同僚でシリーズ1期で失踪し劇場版で再登場する狡噛慎也。彼は常守に「次に会うときは恐らくあんたは俺を裁く立場にいるだろう。そのときは容赦なく務めを果たせ。信念に背を向けてはいけない」と語っていたが――。
「正義のありか」はシリーズを通して問い続けられてきた。社会、法、警察、犯人、常守朱、狡噛慎也……それぞれの正義は劇場版でどのように決着がつくのか。
◆キャラクター設定の妙
アニメの群像劇は作品にどっぷりハマッていないと見るにはハードルが高い。本作は多くの伏線を持ちながら進み、テレビシリーズでは立場の違う者同士の葛藤やベテラン刑事の登場など「踊る~」テイストも感じられた。
近未来設定、頭脳&心理戦に加えて各キャラクターの固有の物語と作品全体の理解を難解にする要素が満載。しかしそこは群像劇を得意とする本広総監督が関わることで実写作品が好きな人でも抵抗なく見られるよう、各キャラクターの性格や考え方の描き分けが非常に丁寧になされている。
1期の中心だった狡噛慎也。以前「法律で人は守れない、なら俺が法の外に出るしかない」と語り、ある事件のあと失踪した。警察組織の一員だった彼が劇場版ではテロリスト侵入の手引きに関わっているらしい。目的は? 狡噛の正義とは? そして彼はシビュラシステムというこの世界の正義によって裁かれるのか? 深く絡み合うキャラクター固有の物語は作品全体をスリリングにし、見る側を「PSYCHO-PASS サイコパス」の世界へ引き込む。練られたキャラクター設定はさすがだ。
「PSYCHO-PASS サイコパス」が放送された深夜アニメ枠「ノイタミナ」には、「アニメの常識を覆したい」「普段アニメを見ない人たちにも見てほしい」という思いが込められている。アニメ好きだけでなく、実写作品やSF好きの人たちへも意識して作られた本作は、アニメ作品が未開拓な大人にもオススメの作品だ。(text:Asaka Katta)
映画『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』は、2015年1月9日[金]より全国公開
2015年 日本映画
日本公開=2015年1月9日
配給=東宝映像事業部
公式サイト http://psycho-pass.com/
©サイコパス製作委員会
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