台湾の鬼才エドワード・ヤン監督の映画『恐怖分子』。本作の構想は、シューアン役のワン・アンが実際に見知らぬ番号へいたずら電話をしたことがある、と監督に告白したことから始まったという。少女の何気ない行為が見知らぬ人々の平穏な日常生活を破壊するように、誰もがまた知らぬ間に他人を傷つける「恐怖分子」になり得るという、現代社会が抱える危機。結婚の破綻、少年少女の犯罪、不正行為、暴力の衝動。人々が日常のなかに隠していた狂気と孤独を描き出す本作は、独創的なミステリー群像劇である一方で、現代に生きる私たちすべてに通じる普遍的な人間ドラマである。
1980年代の台北を舞台に、現代人の抱える狂気と孤独を浮き彫りにする
銃声が響き渡る朝。警察の手入れから逃げだした混血の少女シューアン。その姿を偶然カメラでとらえたシャオチェン。上司の突然の死に出世のチャンスを見出す医師のリーチョンと、執筆にいきづまる小説家の妻イーフェン。何の接点もなかった彼らだが、シューアンがかけた1本のいたずら電話が奇妙な連鎖反応をもたらし、やがて悪夢のような悲劇が起こる……。
エドワード・ヤンの名前を一躍知らしめた、幻の傑作がよみがえる!
ホウ・シャオシェンと並び80年代、90年代の台湾ニューシネマを牽引した映画監督エドワード・ヤンの長編3作目となる本作は、1986年に発表されるとカンヌ国際映画祭、ロカルノ国際映画祭(銀豹賞受賞)で絶賛されヤンの名前を一躍世界に知らしめた。無軌道に犯罪へと向かう10代の少女の心理を繊細にとらえた視線は、14歳の少年による実際の女子学生殺人事件をもとにした次作『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』へとつながっていく。2007年、59歳の若さで亡くなるまで、『カップルズ』(1996)『ヤンヤン 夏の想い出』(2000)など、作品ごとにまったく異なる作風で計7本の長編と1本の短編を監督したエドワード・ヤン。『恐怖分子』は彼の出世作であり、決して多くはないフィルモグラフィのなかでも謎の多いストーリーと精緻な構成がファンを魅了してきた作品。
日本では1996年から19年ぶりの劇場公開となる幻の傑作が、デジタルリマスター版でよみがえる。映画『恐怖分子』は2015年3月14日[土]よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次ロードショー!
映画『恐怖分子』予告編
1986年/香港・台湾映画/109分
原題=恐怖份子、英題=Terrorizers
日本公開=2015年3月14日
配給=フルモテルモ、コピアポア・フィルム
公式サイト http://kyofubunshi.com/
©CENTRAL PICTURES CORPORATION
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