[シネママニエラ]映画『ラブストーリーズ コナーの涙』『ラブストーリーズ エリナーの愛情』のヒットを記念して、NY通のコラムニスト山崎まどか氏がトークイベントに出席した。(ファッションとインテリア)
本作は、ニューヨークを舞台に、ジェームズ・マカヴォイ×ジェシカ・チャステインが扮するひと組のカップルの別れから再生までを男の視点『ラブストーリーズ コナーの涙』、女の視点『ラブストーリーズ エリナーの愛情』と、それぞれ映し出す恋愛映画。
みなさんがニューヨークに持っているようなきらびやかなイメージはセントラルパークや、その東の(メトロポリタン美術館などがある)アッパーイースト、(映画『ティファニーで朝食を』で有名なティファニーなど5番街がある)ミッドタウンだと思います。イースト・ヴィレッジはこういったところと全く違います。
歴史的に一言で言うと、サブカルの中心地。60年代はビート文化の発祥地。(詩人の)アレン・ギンズバーグなんかがたむろしてポエトリーリーディングをやって。CBGBという70年代、80年代にとても有名なライブハウスがあって、ニューヨークパンクの聖地でもありました。(ミュージシャンの)ルー・リードがイースト・ヴィレッジについて歌ったり、『ラブストーリーズ コナーの涙』で(ロックバンドの)ザ・ローリング・ストーンズの話がチラッと出てきますが、彼らも過去にイースト・ヴィレッジでミュージックビデオを撮っていますし。また、今はどうかわかりませんが、(映画監督で脚本家の)ジム・ジャームッシュも住んでいたことでも有名です。
エリナーが映画の中で通っているのは、クーパーユニオン大学ですが、他にもニュースクールやニューヨーク大学など、イースト・ヴィレッジは大学街でもあり、インテリがたくさんいる場所でもあります。イースト・ヴィレッジが面白いのは、いろんな階層の人がいるところ。この映画の舞台がイースト・ヴィレッジである意味を考えてみたのですが、コナーとエリナーは違う文化圏出身なんですよね。コナーはレストラン業界の二世、エリナーは本土の高級住宅地から大学に通うお嬢様。階級ではないですが、文化に差があります。
そんなふたりがここで出会うのは正しい。いろんな人が来る場所だからこそ、ふたりは出会えた。似た者同士ばかりのいるエリアであれば、エリナーとコナーのようなカップルは生まれなかったかもしれない。でも逆に、絆を一度失ってしまうとふたりの足場は弱いところもある。世界観が食い合わないところがあって離れていってしまう。でも、(別れた後も)ふたりはまだイースト・ヴィレッジにいるので、その全く違うふたりがまた出会うことができる。それが、イースト・ヴィレッジを舞台にした面白さだなと思いました。
アメリカ映画/95分、105分
原題=THE DISAPPEARANCE OF ELEANOR RIGBY:HIM and HER
日本公開=2015年2月14日
配給=ビターズ・エンド、パルコ
公式サイト http://www.bitters.co.jp/lovestories/
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