[シネママニエラ]白黒無声映画『アーティスト』では、アカデミー賞作品賞、監督賞ほか5部門を受賞したミシェル・アザナヴィシウス監督が3年ぶりに来日し、新作映画『あの日の声を探して』に込めた思いを語った。
人々の無関心がもたらす姿を映し出した
フレッド・ジンネマン監督『山河遥かなり』から着想を得て製作された本作は、前作とは異なるシリアスなテーマゆえ、監督は「この映画は扱いづらいテーマだったので、通常は企画を通すのは困難を伴うが、『アーティスト』の成功が僕に勇気を与えてくれたんだ」と経緯を話す。
「映画を見て、まずは世界のこのような現状を知ってほしい。でも悲惨な話ではなく、希望の見えるヒューマンドラマですので、是非多くの方に観ていただきたい。ニュース番組で映る悲惨な状況に陥っている人たちの姿は虚像のようで無力感を感じる。だから映画でそれに実像を与えたかった。無関心でいることはいくらでもできる。しかし、戦争を引き起こす引き金は無関心でもあると思う。だからまずは関心をもつことが世の中と意識を変える第一歩なのではないか」と呼びかける。
主人公の9歳の少年・ハジを演じたのは、実際にチェチェンに暮らす素人の男の子。「彼は素人だったけど、とても行儀が良く、優しい心の持ち主で、僕としては楽に仕事することができた。彼自身も父親を亡くし、ハジと同じ悲しい経験し、同様に心に暗闇を抱えている。その一方で、ハジと同様に成長していっているんだ」と明かした。
「この作品では戦争を描きたかったのではなく人間を描きたかったのです。人間には順応する力がある。特に子供はその力が強い。本作では、心に傷を負ったハジが悲しみを乗り越え成長していく様子と、強制的に兵士にならされた19歳の少年コーリャが、虐殺マシーンと化していく様子も描かれている。2人の順応するプロセスというものは表裏一体だが、立場が逆であれば同じ道を辿ることもある」
そして「僕も自分の子供には平和な世界で生きて欲しい。他者を敬うこと、それに寛容な精神をもつことは大事だ。そうすれば人は共存できる気がする。人は一人では生きることはできない。間違ったとしても、それを受け入れることで、また一歩踏み出すことができるはず」という持論を述べた。
フランス・グルジア映画/135分
原題=THE SEARCH(2014) IMDb
日本公開=2015年4月24日
字幕翻訳=寺尾次郎
配給=ギャガ
公式サイト http://ano-koe.gaga.ne.jp/
©La Petite Reine / La Classe Américaine / Roger Arpajou
[amazonjs asin=”B014H99K3C” locale=”JP” tmpl=”Small” title=”あの日の声を探して Blu-ray”]