映画『劇場霊』について
『劇場霊』で描いているのは私の劇映画一作目の『女優霊』に似て、「演劇=虚構」の隙間に忍び込む“魔物”です。その“魔物”は稽古中のステージ上、楽屋、倉庫、そして舞台下の奈落へと「現実への侵入」を止めません。
『女優霊』から20年経ち、実話的心霊テイストと呼ばれたスタイルを乗り越えるため、今回は疾走感、おぞましい異形感というものを強く意識しています。『女優霊』や『リング』を同時代的には観ていない若い観客の方々にもこの恐怖を体感していただきたいです」
「主役に決定して、リハーサル中には、不安と決意の入り交じった緊張した顔をしていて、この映画への真摯な向き合い方がとてもいいと思いました。その不安感や決意は、映画の役の感情表現として相乗効果を上げています。
島崎さんがその「ネコ科の大きな瞳」で不安に震えるとき、恐怖におののくとき、私はこころの中で快哉を叫んでいました。
ホラー映画的ルックと高い集中力を兼ね備えた方です」
「天性の明朗さで分け隔てなく話しかけ、現場を和ませてくれていました。足立さんは親友となる島崎さんにも秘密を持つ難しい役どころだったのですが、それを吐露する場面は、超ハードな撮影になったにも関わらず見事に演じてくれました。
実は私はバラエティ番組が大好きで、そこでの彼女もたいへん魅力的だと思っていますが、同時に映画女優としても貪欲に仕事をしていっていただきたいですね」
「「死神くん」でヒロインの親友役を演じてもらい、高田さんの「核心を突く」演技の技量に感銘を受けました。今回も「役が乗り移るかのように」島崎さんのライバル役を演じきってくれています。彼女が“魔物”から追いかけられて劇場内を逃げ惑うシーンは、われながら出色の出来だと自負しています」
「彼のスマートなイケメンぶりと、演劇の裏方という「ギャップ感」をどう調整するかでリハーサルや撮影初日に町田さんとは真剣に意見交換させてもらい、彼の持ち味を十二分に生かしてもらうことができたと思っています。映画の現場では1カットの準備に2時間くらいかかることもあるのですが、演技する「その時」に備えて静かに待ってくれていたのが新鮮で嬉しかったです」