原作者として、ドリアンは、「人生をやりきった女性を描いている。その背後にたくさんの人の心を感じた。原作者ではありますが、たくさんの魂によって『お前が書け』と言われたと解釈している。いい映画にしていただいて世界へ。今また、ここが始まりという思いです」と、晴れ晴れとした表情を見せた。
ドリアンは別名・明川哲也として河瀨監督の過去作『朱花(はねづ)の月』に出演。そのドリアンが本作の映画化では「言葉にならないものを描きたかった。だから河瀨監督に」と託したという。しかしながら「しばらくしたら河瀨監督が『見えないものをどうやって撮るのよ!』って」と、壁に当たった時期があったことも明かした。
この発言を聞き逃さず、樹木は「そんなこと言ってたんですか?」と驚きの表情に。というのも「(河瀨監督は)わたしに『見えないけれども、お月様の声聞きましたね』って。「いや…」と反応したら、『聞こえるんです!』って。有無を言わさないの」とストイックな演出に言及。
それを一般客にも分かるように「本編に映っているのは、氷山の一角。(監督は役の心情なども)丁寧に説明していただいて、撮って、氷山の下の部分はカット。その下があることで、残った部分だと永瀬さんとも話した。あのシーンも、このシーンも」と思い出深い現場だった模様。登壇時には具合の悪さが明らかだった樹木だったが、幸いなことに時間が経つごとに樹木節を展開していくという、改めて女優魂を見せつけた。
すると、樹木が補足する。「(内田の)一番頑張ったシーンが丸々カットだから。(樹木の役)徳江の14歳を演じて、雨の中頑張って、名古屋から(愛知の)新城まで行って、全部カット!」とぶっちゃけると、客席からは大爆笑が。樹木節を期待していた来場者へのサービスもしっかり。氷山の一角が集まることで素晴らしい作品が誕生していることを裏付けるために語ったものと推測。
司会者から「生まれ変わり」を問われた内田は「これから自分がどんな大人になれるかわからないので、想像はつきませんが」と前置きし「今回で出会った皆さんのように、ひとつのことに情熱を持ち続けられる人になれたらいいなと思います」と15歳とは思えないしっかりした受け答えに、場内は関心しきり。寡黙な永瀬すらも「一番しっかり!」と思わず声をあげた。
日本・フランス映画/113分
公式サイト http://an-movie.com/
配給=エレファントハウス
©映画『あん』製作委員会/Comme des Cinémas/Twenty Twenty Vision
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