杉田成道監督より桜庭ななみさんへのお手紙
桜庭ななみ様、本日公開初日を迎えたこの時をもって、僕らは『最後の忠臣蔵』の全てを作り終えたと言えます。映画が日の目を見るこの日が、僕らの千秋楽です。お別れのときが近づきました。君はよくがんばりました。1ヶ月に及ぶ長い長い稽古の日々。寒い寒い撮影の2ヶ月。随分と年の離れた大人たちの中でただ一人、同年代の友達もなく、緊張と孤独に打ち震え、暗闇を手探りで進んでいこうとしている君の姿は、あくまでも健気で美しく、僕ら大人たちの胸を打ちました。本当によくがんばりましたね。長い間、世話になったのう。瞬く間に過ぎていったその一瞬一瞬が心に残ります。人は出会い、別れ、また出会い、いくつもの出会いと別れの中で珠玉の思い出を残していく。その小さな宝石がたくさんたくさん集まって、大きな女優を育てていく。いつか君もきっとまばゆいばかりの宝石をもった、大きな女優になることでしょう。そのとき、17歳のこの一瞬、この出会いが、君の中で輝きの一瞬にならんことを。また出会うことを夢見て、いま別れよう。さようなら。また会う日まで。
Pages: 1 2