[シネママニエラ]19世紀末フランスに実在した三重苦の少女マリー・ウルタンと、不治の病を抱えた修道女シスター・マルグリットの交流を描く映画『奇跡のひと マリーとマルグリット』でマリー役の女優アリアーナ・リヴォアールに話を聞いた。
人間は誰でも困難の前では平等
――ご出演のきっかけを教えてください
監督がマリー・ウルタン役をろう者に演じてもらいたいと考えていたということで、わたしが通う学校にもオーディションのお知らせが届いたんです。でもわたしはそのオーディションのことを忘れてしまっていて、参加できなかったんです。でも後で監督に会う機会があって、マリー役に選ばれたのです。
それまで普通の学生で、女優になりたいと思ったことはなかったですが、映画『奇跡の人』を観た時に、障がいをもちながら闘っている人々に共感していましたから、監督に「この映画に出ないか」と言われた時は、夢をかなえたというよりは、チャンスがやって来て自分がそれをつかんだと思いました。学生であるわたしが映画に出るには勇気が必要でしたが、マリー・ウルタンという実在した人が障がいを乗り越えたということを伝える映画なので、わたしが出演する意味があるのではと思い出演を決めました。
――初めて演技をされていかがでしたか
現場では今回わたしと一緒に日本に来日している手話通訳のサンドリーヌさんがスムーズな通訳をしてくれたので、監督とも最初からいろいろなことを話し合うことができました。共演のイザベル・カレさんはたくさんの映画に出ているベテラン女優さんですが、先にイザベルさんの撮影を進めてもらって、それをじっくり見てからわたしのパートの撮影に入ったので、撮影が進むにあたって演技することが気持ち良くなっていきました。
――どのようにしてマリー役に取り組みましたか?
撮影前には実際にろう学校に行って、皆さんの生活ぶりを見せてもらいました。最初マリーは両親と狭い世界に生きていたので、あまりにも情報に欠けていました。学ぶことに対してモチベーションをもつほどの情報がなくて、暴れるしか表現の仕方が判らなかった。マルグリットはマリーの中にある聡明さを直感で感じ取って、彼女に情報を与えて彼女の可能性を引きだしたのだと思います。マリーはそんな風にして成長していったのだと思いながら演じました。
――この映画の撮影を通して感じたことは?
人間は誰でも、困難の前では平等というか、困難は誰にでもありますよね。仕事がうまくいかない、コミュニケーションがうまくいかない、勉強ができないなど。マリー・ウルタンの場合は目が見えず、耳が聞こえないということでコミュニケーションがとれないという困難で、彼女をその悩みから救い出してくれる人を待つしかなかったのです。彼女には幸いマルグリットというシスターが現れて、救ってくれました。>>つづく
映画『奇跡のひと マリーとマルグリット』は、2015年6月6日[土]よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
フランス映画/94分
Marie Heurtin(2014)IMDb
配給=スターサンズ、ドマ
公式サイト http://www.kiseki-movie.jp/
© 2014 – Escazal Films / France 3 Cinéma – Rhône-Alpes Cinéma
アリアーナ・リヴォアール|Ariana Rivoire
1995年3月4日、フランス・オーヴェルニュ生まれ。ジャン=ピエール・アメリス監督によって見出され、本作で映画デビューした。生まれつき耳が不自由な彼女はフランスのサヴォワにある国立聾学校の寄宿生で、バカロレア(大学入学資格)を取得している。
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