人間は誰でも困難の前では平等
――ご出演のきっかけを教えてください
監督がマリー・ウルタン役をろう者に演じてもらいたいと考えていたということで、わたしが通う学校にもオーディションのお知らせが届いたんです。でもわたしはそのオーディションのことを忘れてしまっていて、参加できなかったんです。でも後で監督に会う機会があって、マリー役に選ばれたのです。
それまで普通の学生で、女優になりたいと思ったことはなかったですが、映画『奇跡の人』を観た時に、障がいをもちながら闘っている人々に共感していましたから、監督に「この映画に出ないか」と言われた時は、夢をかなえたというよりは、チャンスがやって来て自分がそれをつかんだと思いました。学生であるわたしが映画に出るには勇気が必要でしたが、マリー・ウルタンという実在した人が障がいを乗り越えたということを伝える映画なので、わたしが出演する意味があるのではと思い出演を決めました。
――初めて演技をされていかがでしたか
現場では今回わたしと一緒に日本に来日している手話通訳のサンドリーヌさんがスムーズな通訳をしてくれたので、監督とも最初からいろいろなことを話し合うことができました。共演のイザベル・カレさんはたくさんの映画に出ているベテラン女優さんですが、先にイザベルさんの撮影を進めてもらって、それをじっくり見てからわたしのパートの撮影に入ったので、撮影が進むにあたって演技することが気持ち良くなっていきました。
――どのようにしてマリー役に取り組みましたか?
撮影前には実際にろう学校に行って、皆さんの生活ぶりを見せてもらいました。最初マリーは両親と狭い世界に生きていたので、あまりにも情報に欠けていました。学ぶことに対してモチベーションをもつほどの情報がなくて、暴れるしか表現の仕方が判らなかった。マルグリットはマリーの中にある聡明さを直感で感じ取って、彼女に情報を与えて彼女の可能性を引きだしたのだと思います。マリーはそんな風にして成長していったのだと思いながら演じました。
――この映画の撮影を通して感じたことは?
人間は誰でも、困難の前では平等というか、困難は誰にでもありますよね。仕事がうまくいかない、コミュニケーションがうまくいかない、勉強ができないなど。マリー・ウルタンの場合は目が見えず、耳が聞こえないということでコミュニケーションがとれないという困難で、彼女をその悩みから救い出してくれる人を待つしかなかったのです。彼女には幸いマルグリットというシスターが現れて、救ってくれました。>>つづく
映画『奇跡のひと マリーとマルグリット』は、2015年6月6日[土]よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
フランス映画/94分
Marie Heurtin(2014)IMDb
配給=スターサンズ、ドマ
公式サイト http://www.kiseki-movie.jp/
© 2014 – Escazal Films / France 3 Cinéma – Rhône-Alpes Cinéma
アリアーナ・リヴォアール|Ariana Rivoire
1995年3月4日、フランス・オーヴェルニュ生まれ。ジャン=ピエール・アメリス監督によって見出され、本作で映画デビューした。生まれつき耳が不自由な彼女はフランスのサヴォワにある国立聾学校の寄宿生で、バカロレア(大学入学資格)を取得している。
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「映画もバリアフリーに」と必要性と理解を訴える
――映画のイメージと実際のアリアーナさんは、イメージが違いますね。
――マリーという役を通して共感したことなどありますか
実生活でわたし自身がコミュニケーションの困難を経験していたからマリーの役ができたと思います。美容院やパン屋さんに行くにしても日常生活の中で、なかなかわたしの要求していることが分かってもらえないことがあります。わたしたちろう者にとっては、皆さんが理解してくれないことがさらなる困難になってしまうのです。そんなことをこの映画を理解していただけたらと思います。お互いがお互いの違いを理解して寛容な心をもてたら争うこともなくなるのに、と感じています。
――撮影で大変だったシーンはどこですか?
暴れるシーンです。シスターマルグリットと取っ組み合いになるシーンがありますが、取り直す時に最初からまた全部を演じなければならないので、暴れるシーンは結構大変でした。逆に野生児のようなマリーが木登りをするシーンでは、わたしも田舎育ちで高い木に登っていたので、楽々とこなすことができました。
――アリアーナさん自身が好きな映画はありますか?
『ダイバージェント』とか大好きです。わたしが観るのはアメリカ映画が多いですね。実はフランス映画は実はあまり観ないんです。演技がわざとらしいしフランス映画のユーモアも重く感じてしまいます(笑)。
――初来日の日本についてどう思いましたか?
人々が礼儀正しくて優しくてびっくりしました。フランスでも日本食を食べたことがありますが、やはり本場のお寿司はおいしかったです。
――この映画で伝えたいことはありますか?
この映画はわたしのようにろうであるとか、バリア(障がい)をもった人たちにも観てほしいということです。フランスでは、本作をフランス語の字幕付きで観ていただくことができたんです。そのために監督が、様々なところに掛け合って、大変な努力をしました。皆さんに、そんな風にバリアフリーで観ていただく、違いをもっている人も含めて皆さんに楽しんでもらうのが映画という娯楽だと、わたしは思います。
人間はそれぞれ困難をもっている、違いももっている。でも映画というものの前では、皆が平等に楽しめることが大切だと思います。たくさんの人たちが均等に機会をもらえるという、今回、監督の尽力のもとにそのようにアクセスできたことは素晴らしいことです。この方法が、フランスのパイロットモデルとして世界中に広がっていくことをわたしは祈っています。
映画『奇跡のひと マリーとマルグリット』は、2015年6月6日[土]よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
フランス映画/94分
Marie Heurtin(2014)IMDb
配給=スターサンズ、ドマ
公式サイト http://www.kiseki-movie.jp/
© 2014 – Escazal Films / France 3 Cinéma – Rhône-Alpes Cinéma
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