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アカデミー賞スウェーデン代表作『さよなら、人類』の美術と空間演出

映画『さよなら、人類』を語る木村俊幸氏、五十嵐太郎氏[シネママニエラ]第71回ヴェネツィア国際映画祭 金獅子賞(グランプリ)受賞した、ロイ・アンダーソン監督の3部作『リビング・トリロジー』シリーズのひとつ映画『さよなら、人類』がアカデミー賞外国語映画賞のスウェーデン代表に決まったことを9月1日(現地時間)情報サイト「hollywoodreporter.com」が報じた。

日本でも公開初日から、満席の回も出る好調なスタートをきり、YEBISU GARDENCINEMAオープン以来、初日・2日目の動員・興収記録1位となり、また最高の日計動員記録も更新している話題作について、日本のトップクリエイターのお二人マットペインターの木村俊幸氏、建築評論家の五十嵐太郎氏が語った。

映画『さよなら、人類』ご感想

木村「幻想的なのにすごくリアル。哀しみや喜びが絶妙に描かれていって、まるで、面白い夢を見たのに話せない…そんな朝、逃げてしまった夢のような映画ですよね」
五十嵐「登場人物が白塗りでまるで彫刻のよう。ジョージ・シーガルという(彫刻家)のアーティストがいますが、日常を切り取る感じなど近い雰囲気を感じました。空間の表現も独特で非常に興味深かったです」

映画『さよなら、人類』の映画美術について

©Roy Andersson Filmproduktion AB
木村「マットペイント(背景画)を使っているとは聞いていましたが、ほとんど気づきませんでした。そもそもマットペインターは映画において隠れた存在です。しかもCG全盛の時代手描きで仕事をする人は絶滅危惧種といっていいほど。通常、SF作品では多く用いられるマットペイントですが、この作品のように「日常」を撮影するためにこんなに多用するのは珍しいですよね。しかもそれが自然に見える。監督の目には、すごいものが仕込まれているんじゃないかと思いました!」

映画『さよなら、人類』の空間演出について

五十嵐「空間が、斜め45度で作られているショットが多くて、独特だなと思いました。固定カメラなのに奥行を出すために効果的に演出していて、面白いですよね。印象に残ったのは、18世紀の国王が登場するシーン。手前は静止画のようなのに、後ろの窓の外では騎馬隊の列が絶えず動いている。西洋絵画の屋内の表現は長い歴史がありますが、ロイ・アンダーソン監督の作品を観ていると、そんな絵画と映画の繋がりを感じて、より楽しめるのではないかと思います」

ロイ・アンダーソン監督の作品は、1シーン1シーンがまるで絵画のような、徹底的に作り込まれた映像美が魅力のひとつ。CG全盛期の現代にも関わらず、巨大なスタジオにセットを組みマットペイントを多用して、細部にまでこだわった配色や美術は、業界の垣根を越え、日本でもトップクリエイターの方々をも魅了している。

映画『さよなら、人類』予告編

スウェーデン=ノルウェー=フランス=ドイツ映画/100分
原題=A PIGEON SAT ON A BRANCH REFLECTING ON EXISTENCE(2014)IMDb
日本公開=2015年8月8日
配給=ビターズ・エンド
公式サイト http://bitters.co.jp/jinrui/
©Roy Andersson Filmproduktion AB

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