[シネママニエラ]オリヴィエ・アサイヤス監督が、映画『アクトレス~女たちの舞台~』について語った。
クリステン・スチュワート 映画『アクトレス』めがね女子で新境地開拓!
映画『アクトレス~女たちの舞台~』はジュリエット・ビノッシュからインスピレーションを受けて作った作品です。今回の作品を作るにあたってはまずは『夏時間の庭』の世界的成功があるのですが、しかしジュリエットは、あの作品の中では大きなパズルの中の一つのピースに過ぎず、欲求不満があったのだと思います。
時間の経過がもたらすめまいについて映画が作れるのではないか
私たちは長いつき合いでもありましたから、『夏時間の庭』での協力関係をさらに突き詰めて、また一緒に仕事をする価値がある事ではないかとジュリエットが考えたのだと思います。そして、彼女の方から私に電話がかかってきました。私たちは昔『ランデヴー』という作品で俳優と共同脚本家として出会いました。それからとても長い時間が経過したという事に気づき、めまいがするような気がしました。私は、その「時間の経過がもたらすめまい」について映画が作れるのではないかと考えました。
そこから、マリアとジュリエットを切り離して考えることはできないのですが、マリアはジュリエットを巡るキャラクターとして私が空想して作り上げた人物です。実際にはマリアとジュリエット本人は、似ている所もあれば違うところもあるでしょうが、ジュリエット自身もこの役を演じることを楽しんでいたと思います。マリアの役は映画を観る人が「ジュリエット・ビノシュはきっとこういう人だろう」と想像するジュリエットのイメージに似ているのではないでしょうか。
ジュリエット・ビノシュとクリステン・スチュワートの演技と力動性のおかげ
ジュリエット・ビノシュとクリステン・スチュワートは撮影を重ねるにつれて、彼女たちの間に徐々に信頼や友情や敬愛の気持ちが芽生えていったようです。もともとクリステンはジュリエットの生き方や仕事ぶりを見ていてリスペクトしていたそうです。ジュリエットとクリステンの関係がうまくいくことがこの作品にとって重要なポイントでしたから、準備の段階では不安になり、私は危険を冒しているのではないか? という気がしてきました。
ところが実際には全くそんなことはなく、脚本を書いた時と違うものになったのは彼女たち自身の演技と力動性のおかげです。クリステンにとってジュリエットは、自由と精神のバランスを保ち続けてきた女優であり、そのメカニズムとビノシュのキャリアの道程を学びたいと思っていたようです。かたやジュリエットがクリステンの中に見たものは、若いけど映画に対する情熱があることです。お互いに刺激しあい、いい意味での競争心がありました。私はそんな二人を観察し、二人の関係が進展するのをドキュメンタリーのように撮影しただけです。
現場にいる者全員が貢献できるような環境をつくること
というのも、私はもともと全くリハーサルを行わないのです。セリフを言うときの自発性がリハーサルによって失われることを恐れています。俳優たちが初めてセリフを言う時には、もう現場のカメラは回っています。もちろん女優たちは、それぞれが自分で稽古をしてくるでしょうが、インプロビゼーションを大事にしています。クリステンはセリフ覚えが良く、その日の朝にセリフを覚えてきていました。私が心掛けているのは映画は集団芸術であるということです。一方的に指揮するのではなく、共同作業であるので、現場にいる者全員が貢献できるような環境をつくること。俳優がしっかりと呼吸できる現場の環境をつくることも監督にとって大事なことだと思います。
[スタッフ]
オリヴィエ・アサイヤス
[キャスト]
ジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワート、クロエ・モレッツ
フランス、ドイツ、スイス映画/124分
原題=Clouds of Sils Maria (2014) IMDb
日本公開=2015年10月24日
配給=トランスォーマー
公式サイト http://actress-movie.com/
[amazonjs asin=”B002OC06HY” locale=”JP” tmpl=”Small” title=”夏時間の庭 DVD”]