[シネママニエラ]スティーヴン・スピルバーグ監督が新作映画『ブリッジ・オブ・スパイ』で4度目のタッグを組んだ主演俳優のトム・ハンクスについて、「彼は完璧な配役だった」と絶賛。トム・ハンクスもスピルバーグ監督を「天才的なレベルに我々普通人を招いてくれるコラボレーター」だと敬うなど“ドリームコンビ”のコメントが明らかになった。
実話に基づく本作は『シンドラーのリスト』や『アミスタッド』同様に、スピルバーグ監督の渾身作。トム・ハンクス扮する普通の弁護士ドノヴァンに与えられたミッションは、敵地の東ベルリンで自国と敵国のスパイ交換交渉を成し遂げること。判断を誤れば即射殺という緊迫した状況のもと、ドノヴァンの孤立無援の闘いを捉えていく。
インターナショナルプレミアは、物語の舞台となったベルリンの地で催された。会場はウーファ・パラスト・アム・ツオーは、1919年に開業された歴史ある映画館だ。
「コーエン兄弟たちが書いた脚本が素晴らしく、すべてが繊細な出来事の積み重ねだったので、セリフがわずか2行しかない役や、最も小さな役でさえも、細心の注意を払わなければならなかった。豪華なアンサンブルキャストが実現した、本当に素晴らしい作品になったと思います。
(再び不安な時代を現代は迎えているが各国のリーダーにメッセージは?)人道的危機に関する世界中で起きている状況には、思いやりをもって対処すれば、世界はもっと良いものになるということは常識だと感じています。思いやりの心というのが薄れて行ってしまっている様にも感じています。思いやりがあるのはどの国なのか、助け、受け入れようという気持ちがある人々は誰なのか、生き延びて行くために助けを必要としているのは誰なのか、私はこういったことに注目します。そういうことを意識し、思いやりを持ち、自分の思いに従って行動しなくてはなりません」
「本作ではスピルバーグ監督のベストを期待してもらえると思います。彼の作品では、ロボットやエイリアンを扱ったものが最高だと思われているようですが、彼のベストは人間を扱った題材なんです。この映画は『シンドラーのリスト』や『アミスタッド』、そして前作『リンカーン』といった作品に匹敵するものです。人間が驚異的な状況を切り抜けていく様を描くスピルバーグ監督の能力は、他の惑星からやってきたエイリアンを描写する彼の能力と同じくらいすばらしい。
スピルバーグ監督と一緒に仕事をするのは今作で4作目になるけれど、彼は、その天才的なレベルに我々普通人を招いてくれるコラボレーターであると思います。「君はどう思う?何か良いアイデアはあるかい?」とよく聞かれます。僕に電話してくれるというだけでも、自分は恵まれていると考えているんです」
映画『ブリッジ・オブ・スパイ』あらすじ
1950~60年代、アメリカ合衆国と旧ソビエト連邦が世界を二分して対立し、一触即発の冷戦状態にあった。ジェームズ・ドノバンは、保険の分野で実直にキャリアを積み重ねてきた弁護士。ソ連のスパイの弁護を引き受けたことをきっかけに、世界の平和を左右する重大な任務を委ねられる。それは、東西に分裂していたベルリンに赴き、自分が弁護したソ連のスパイと、ソ連に捕えられたアメリカ人スパイの交換を成し遂げることだった…。
映画『ブリッジ・オブ・スパイ』(20世紀フォックス映画 配給)は2016年1月8日[金]よりTOHOシネマズスカラ座ほか全国公開
公式サイト http://www.foxmovies-jp.com/bridgeofspy/
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映画『ブリッジ・オブ・スパイ』予告編
©Twentieth Century Fox Film Corporation and DreamWorks II Distribution Co., LLC. Not for sale or duplication.
トム・ハンクス×スピルバーグ監督コメント付き映像
©Twentieth Century Fox Film Corporation and DreamWorks II Distribution Co., LLC. Not for sale or duplication.
[スタッフ]
監督=スティーヴン・スピルバーグ
脚本=ジョエル&イーサン・コーエン
[キャスト]
トム・ハンクス
映画『ブリッジ・オブ・スパイ』は、2016年1月8日[金]よりTOHOシネマズスカラ座ほかにて全国公開
映画『ブリッジ・オブ・スパイ』日本版ポスター
映画『ブリッジ・オブ・スパイ』は、2016年1月8日[金]よりTOHOシネマズスカラ座ほかにて全国公開
映画『ブリッジ・オブ・スパイ』記者会見
スピルバーグ監督とトム・ハンクスは『プライベート・ライアン』(98)、『キャッチ・ミー・イフ・ユーキャン』(02)、『ターミナル』(04)以来、11年ぶりの4度目のタッグ。
スピルバーグ監督は3つのアカデミー賞『プライベート・ライアン』(98)監督賞、『シンドラーのリスト』(93)作品賞・監督賞に輝く。
主演トム・ハンクスは2つのアカデミー賞『フィラデルフィア』(93)主演男優賞、『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)主演男優賞、を受賞した
また、脚本を担当したコーエン兄弟も『ファーゴ』(96)で脚本賞、『ノーカントリー』(07)で作品・監督・脚色賞を受賞している。
記者会見ではオスカーについて言及した。
「アカデミー賞は同業者に認められるという映画界一の栄誉だ。だから、授賞式の会場にいて、選考対象になるというだけで名誉なことです。今回も受賞をあてにしているわけではないし、これまでも期待したことはなかったが、アフターパーティに招待してもらえるというだけで嬉しいものです。考慮されるというだけで名誉なことなんです。同時に私の映画や出演者が様々な形で認められるというのは嬉しいものだとこれまでもずっと感じてきました。1年のうちでとてもエキサイティングな時であり、またナーバスな時です。ただ、私はあまりあてにしない様にはしているがね」
「(オスカーの本命という声も聞かれますが) 本当?そんなこと誰が言っているのかい(笑)? 自信はまったくないね。一か八かの賭けのようなもので、期待することができるものではないよ」
映画『ブリッジ・オブ・スパイ』場面写真
映画『ブリッジ・オブ・スパイ』は、2016年1月8日[金]よりTOHOシネマズスカラ座ほかにて全国公開
映画『ブリッジ・オブ・スパイ』原作・関連
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映画『ブリッジ・オブ・スパイ』は、2016年1月8日[金]よりTOHOシネマズスカラ座ほかにて全国公開
映画『ブリッジ・オブ・スパイ』コラム
世界が戦争勃発の恐怖に怯える中、平和の鍵を握っていたのは、ひとりの普通の男だった――。原題はThe bridge of spiesではなくBridge of Spiesとしたことからスパイの懸け橋といったところか。
スピルバーグが監督、トム・ハンクスが主演、それにコーエン兄弟が脚本というゴールデントリオのタッグ。しかも実話を基にした作品というだけで、本作への期待値はぐぐーんと上がるのは言わずもがな。
で、その期待を裏切られることはなかった。
オープニング、鏡にはスパイ映画とは無縁とおぼしき中年男性の姿が。何をしているのだろうかと思わせる。このシーンは、単純に自画像を描いているだけなのだが。
ジェームズ・ドノバン弁護士は偉業を成し遂げた人物というのが鑑賞直後の感想だ。しかし、ほどなくして人としての基本がしっかりした人だと思えた。彼の行動規範は合衆国憲法にのとって「すべての人は平等」というもにあったのだから。
ドノバンの行為を「敵…」「…敵」と非難する人々からは集団心理の怖さも感じ取れる。あげくにドノバンの自宅(妻や娘が在宅!!)を銃撃するなんて輩も。一方、そのようなことは「無知な人がすることだ」と彼を励ます人もいたのは救い。
グリーニッケ橋(=統一の橋 )でスパイを交換する。本作でのスパイ交換の比率は2人:1人というつり合いのとれないもの。それを交渉相手が東・西で異なるため、ドノバンの頭脳戦と交渉術が冴えていく。その過程はスリル満点だ。
ドノバン役を演じられるのはトム・ハンクスのほかにいないだろう。だからこそスピルバーグ監督は「完璧な配役」と公言したし、ルドルフ・イヴァノヴィチ・アベル(ロシア語 Рудольф Ива́нович Абель,本名ウィリアム・フィッシャー)役で助演のマーク・ライランスも印象に残る。
アベルの内心に気遣いを見せるドノバン。その度に発せられるアベルの言葉が深い。
James Donovan: Aren’t you worried?
Rudolf Abel: Would it help?
スパイの覚悟といったところか。ちなみに、のちにソ連郵政当局がアベル氏の切手を発行していることも何とも何とも。
【映画で知る世界】として一人でも多くの人にすすめたい映画だった。
映画『ブリッジ・オブ・スパイ』(20世紀フォックス映画 配給)は2016年1月8日[金]よりTOHOシネマズスカラ座ほか全国公開