[シネママニエラ]俳優の東出昌大が、松山ケンイチ主演で実在の棋士・村山聖(さとし)さんを描く映画『聖の青春』で好敵手の天才・羽生善治役に臨んだことが明らかになった。精魂込めたお芝居からか、完成は「言葉にならなかったです」と吐露。あわせて同作の配役が一挙に発表された。
本作は100年に1人と言われる天才・羽生善治と「東の羽生、西の村山」と並び称されながら、29歳にして亡くなった実在の棋士が病と闘いながら将棋に全人生を賭けていく半生を、師弟愛、家族愛、友情を通して描くヒューマンドラマ。
映画化に際して、羽生善治氏は「村山さんの生き様を描いた聖の青春が映画化されると聞いて、彼の存在の大きさを感じました。自分も出てくるので気恥ずかしいところもありますが東出さんに演じて頂いたのはとても名誉な事だと思っています。将棋を知らない人達にも楽しんで感じて観てほしいと思います」とコメントを寄せている。
その聖の最大のライバルであり、松山ケンイチ自身が「本作のヒロインである」と語る羽生善治を演じるのが東出だ。実在し、かつ今なお棋界の頂点で活躍する人物という難しい役どころを、精神・肉体面の両方からアプローチ。徹底した羽生研究を行い、羽生本人と瓜二つの姿で撮影現場を驚きの声に沸かせた。東出は「この作品には、人生、青春、生きがい、誇り、尊い多くのものが映っています。一人でも多くの方に観てもらいたい。月並みな事を言うようですが、切に思います」と訴える。
なお、劇中の「羽生メガネ」は、1996年に史上初となった七大タイトル戦七冠独占達成時に実際にかけていたものを、東出が羽生本人から譲り受けたものだという。
映画『聖の青春』あらすじ
1994年、将棋のプロ棋士・村山聖(松山)七段は、将棋界最高峰のタイトル「名人」を目指し、15歳の頃から10年間弟子入りし同居していた森師匠(リリー・フランキー)の元を離れ、上京しようとしていた。聖は幼少期より「ネフローゼ」という腎臓の難病を患っており、両親(北見敏之、竹下景子)や仲間は反対する。しかし、幼いころから何をおいても将棋にかけてきた聖を見ている森師匠は、背中を押す。
東京。髪や爪は伸び放題、足の踏み場もなく散らかった家、酒を飲むと先輩連中にも食ってかかる聖に皆は呆れるが、みな彼の将棋にかける思いを理解し、陰ながら支えた。その頃、同世代の棋士・羽生善治(東出)が前人未到のタイトル七冠を達成する。聖は強烈に羽生を意識し、ライバルでありながら憧れの想いも抱く。
(日本映画/分)
映画『聖(さとし)の青春』(KADOKAWA配給)は2016年秋公開
公式サイト http://satoshi-movie.jp/
映画『聖の青春』東出昌大コメント全文と配役・キャラクター解説
村山と同世代のライバルであり、村山が慕い尊敬した若きスター棋士。1996年将棋の七大タイトルを全制覇、史上初の七冠独占を達成する。
「とにかく素晴らしい原作と脚本で、現場に入る前からこの作品に携われることに大きな幸福感と闘志を抱いていました。(役作りは)先ず、羽生さんが七冠を獲った頃に、実際にご本人がお使いになられていた眼鏡をご本人からお借りできたことが、大変有り難く、幸運でした。あとは全て「見てからのお楽しみ」です。クランクイン初日、色々な想いの中、街中で立ち尽くすシーンで、監督が演出に来て「芝居をするな」と仰言ったのが強く記憶に残っています。松山ケンイチさんは元々、尊敬する大先輩だったので、松山さんとのお芝居の中で過ごせた時間が自分の宝になりました」
「人類を代表する知性、しかもいまだ現役で棋界のトップを走る羽生さんを演じるということは、どんな俳優にとっても大きな重圧だと思います。しかし、東出昌大という俳優は、その重圧に負けない、本当に大きな器を持っていました。彼は、羽生さんへの心の底からの尊敬を足場にし、佇まい、所作、棋譜、精神性まで徹底した研究に研究を重ね、実際に羽生さんと対戦してきたプロ棋士たちも納得の若き羽生像を作り上げました。これまでの俳優東出昌大のキャリアにおいて、ベストアクトなのではないかと思っています」
「撮影現場での東出さんは、天才羽生善治三冠を演ずる歓びに満ちあふれ、この作品に絶えず明るく暖かい光を当ててくれたように思います。それはまぎれもなく、松山ケンイチさん演ずる怪童村山聖への愛であり、この世界を生きる抜くことへの強い意志を体現していると思います。俳優東出昌大の新たなる境地にご期待ください」
村山を献身的に支える師匠。聖が15歳のころ、広島将棋センターを通して大阪の森の所に弟子入り。数か月の同居生活をして、ネフローゼの症状で体調の悪い聖を支えた。別々に住むようになってからも、すぐ近所に住み、何かと世話する。
聖の故郷・広島に住む聖の母親。息子を病気にさせてしまった罪悪感に苦しみつつも、プロ棋士になるという息子の夢を尊重し、まだ15歳の息子を大阪の森のところに送り出す。自分の身体のことよりも将棋に没頭する息子を心配する。
聖の弟弟子。プロ棋士の予備軍である奨励会員。プロ一歩手前の三段リーグに所属。満26歳までに四段に昇段できなければプロへの道が閉ざされるというルールに苦しみ喘ぐ。森師匠と共に、聖とは家族のような存在。
病床の村山を心配しながら明るくサポートするプロ棋士。
プロ棋士。東京に出てきた聖と、公私ともに交流。
聖の故郷・広島に住む聖の父親。妻トミ子と共に聖を支える。
将棋連盟の職員であり、連盟が発行する将棋雑誌編集長。森師匠とは旧知の仲であり、のちに東京に出てきた聖の“東京の師匠”として聖をサポート。麻雀や酒など、将棋以外でも聖と仲良くする。