宮崎駿が羨望するジブリ映画『レッドタートル』監督と鈴木敏夫Pの制作秘話
[シネママニエラ]スタジオジブリ初の海外共同製作となるアニメーション映画『レッドタートル ある島の物語』の完成報告会見が都内のホテルで開催され、来日中のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督とスタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサー(以下、鈴木P)が出席。製作経緯と裏話を語った。
本作は、米国アカデミー賞短編アニメーション映画賞を受賞した8分の短編映画『岸辺のふたり』を鑑賞して魅せられたという、鈴木Pが軸となりフランスの制作会社ワイルドバンチの責任者ヴァンサン・マラヴァルとともに本作を世に送り出した。実はカンヌ国際映画祭出品のために本年3月には完成しており、日仏同時公開を計画していたという。結果的に、フランス、ベルギー、オランダ等のヨーロッパでの公開が先行し、日本は秋公開の運びとなった。
これまで主に個人で制作してきたドゥ・ヴィット監督は、まず「スタジオジブリは作家性を尊重してくれること」をあげ、「信頼関係が築けたからこそ、企画のスタート時は契約書を交わすこともなかった」という裏話も飛び出した。制作スタイルの違いから議論を交わすこともあったが「すべての意見を並べて静かに論議していくスタイルは自分好みであり、性に合っていた」と制作環境の良さを強調。
さらには、敬愛する高畑勲監督がアーティスティック・プロデューサーに就き、「あくまでも君の映画だから」や「メインテーマと同じぐらいディティールは大事」だと折に触れ助言を受けたことも貴重な体験であったと話す。そして鈴木Pからは「極力台詞を削ぐこと」を、高畑Pからは「すごくいいシーンなのになぜ削ったのか?」と男女が月夜に草原を歩くシーン、俯瞰の浮遊シーンについて再考を促されたそう。監督自身「2つともお気に入りのシーンだったし出来栄えも良かったのに、なぜだかあのときは削ってしまった。自分でも理由がわからない(笑)。すぐに戻しました。戻して良かった」と明かした。
なお、鈴木Pによると、宮崎駿監督は本作を鑑賞しており8月29日にはスタジオジブリにてヴィット監督と対談済。宮崎監督は完成まで10年に及ぶ制作期間を労い、そして日本アニメーション映画の影響を受けず独自性を貫いた作風を「見事だ」と褒め称え、さらには「このスタッフが欲しい!」とまで言わしめたそう。この発言の背景にはスタジオジブリの現在の制作手法として手書きとデジタルとの転換期の途中であり、宮崎駿監督の短編『毛虫のボロ』は手書きとCGの両方を用いた作品であることが語られた。
映画『レッドタートル ある島の物語』(東宝 配給)は2016年9月17日[土]より全国公開
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公式サイト red-turtle.jp
映画『レッドタートル ある島の物語』作品情報・予告編
8分の短編映画『岸辺のふたり』(マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督)を観る
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マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督が、圧倒的なアニメーション力で描く本作は、第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にて特別賞を受賞した。フランス、オランダ、スイスなどでの公開を経て、ついに日本でも公開となる。
映画『レッドタートル ある島の物語』あらすじ
嵐の中、荒れ狂う海に放りだされた男が九死に一生を得て、ある無人島にたどり着いた。必死に島からの脱出を試みるが、見えない力によって何度も島に引き戻される。 絶望的な状況に置かれた男の前に、ある日、一人の女が現れた。
(原題 La tortue rouge 英題The Red Turtle (2016)IMDb /日本、フランス、ベルギー映画/81分)
映画『レッドタートル ある島の物語』特報
https://youtu.be/bxnV__Yzvtw
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映画『レッドタートル ある島の物語』(東宝 配給)は2016年9月17日[土]より全国公開
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