サイトアイコン シネママニエラ

巨匠クリント・イーストウッド「映画は感情表現の芸術だ」

「映画は感情表現の芸術だ」との持論をもつ巨匠クリント・イーストウッド監督と撮影を共にした男たちの真実!監督が「ごく普通の人々に捧げた物語」だと語る最新作『15時17分、パリ行き』(原題 THE 15:17 TO PARIS )は、当事者の目線からテロの真実を浮かびあがらせる。

アンソニー・サドラー(写真左)、オレゴン州州兵のアレク・スカラトス(右)、そして米空軍上等空兵のスペンサー・ストーン(中央)
©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

「イーストウッド映画で自分を演じるとは想像すらしなかった」

2015年8月21日、パリ行きの特急列車内で乗客全員554人をターゲットした無差別テロ襲撃事件が発生。極限の恐怖と緊張感の中、武装した犯人に立ち向かったのはヨーロッパを旅行中だった3人の心優しきアメリカ人の若者たちだった。

世界が敬愛する巨匠の最新作で主演デビューを飾った3人は、米国カリフォルニア州サクラメント郊外の労働者階級出身の幼なじみ。事件当時学生だったアンソニー・サドラー(写真左)、オレゴン州州兵のアレク・スカラトス(右)、そして米空軍上等空兵のスペンサー・ストーン(中央)。休暇旅行中にヨーロッパを訪れていた3人の若者は、突如に特急列車タリス号内で無差別テロに直面した。

————自分たちの映画が、クリント・イーストウッド監督で映画化されることになって、どう思いましたか?

アンソニー・サドラー:
スペンサーが「一体誰が電話をして来たと思う?」と電話をくれた。「そんなのわからない。誰なんだい?」と尋ねた。返事は「クリント・イーストウッドだよ! 僕たちの本を読んで、映画を作ることに興味を持っている。」と言うんだ。それ以上最高なことはないって感じだった。その後、僕たちに「自分たち自身を演じて欲しい」と言われた時、さらに驚かされたんだ。

————スペンサー、その電話はどうでしたか?

スペンサー・ストーン:
間違いなく驚いたよ(笑)。正直言ってものすごくホッとした。彼なら僕たちのストーリーの良さをちゃんと表現して、正しく映画にしてくれることがわかっていたから。あまりドラマティックにしすぎることなくね。始めるに当たって僕らは彼に深い信頼を持っていたし、それが何よりもエキサイティングなことだったよ。

————アレク、あなたの心にはどういう思いがよぎりましたか?

アレク・スカラトス:
彼らと同じようにホッとした。クリントが僕たちの映画を製作することについて、話し合って同意した時のことを覚えている。僕はちょうど『ハドソン川の奇跡』を観たばかりだった。だから、それが最近の彼の得意分野だということを知っていたし、がっかりするものには絶対ならないことがわかっていた。僕たちは本当に正直に、彼が監督するということにすごく興奮したしホッとしたんだ。

————クリント・イーストウッドの映画で俳優になりました。この職業は、あなたたちが今後希望するものでしょうか?

アレク・スカラトス:
僕らは少なくとも、俳優をやってみたいと思っているよ。新しい経験だったしとても楽しかった。俳優に挑戦することが僕らをどこに導くかを見てみたい。

スペンサー・ストーン:
間違いなく、撮影は僕の人生で最高に楽しい2ヶ月だった。だからもし自分がそこからキャリアを築けるなら、僕は間違いなく気にいるよ。映画化のプロセスは面白かった。自分自身についてもっと多くを知ったように感じられたんだ。それに自分の中にある不安と向き合うことが出来た。僕は事件発生時に立ち戻り、自分自身を演じた。映画という形で多くの人たちが永遠に目にするであろうものを、俳優として拾い上げ選んだ。この経験から、事件の恐怖を忘れて怯えることなく過ごすことを学んだよ。

アンソニー・サドラー:
イーストウッド監督が、僕らにトライする自信を与えてくれた。映画化のプロセス全体を通して、彼は僕らの師となり前進する勇気を与えてくれた。

©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

————原作と最終的な脚本の間に、何か大きな違いはありますか? 観客には、この映画を見てどんなことを持ち帰ってもらいたいですか?

アレク・スカラトス:
本と脚本はとても近いと思う。脚本は本を基に書かれているし、僕らは脚本にも意見を入れさせてもらったからね。だからとても近くて正確だよ。

アンソニー・サドラー:
観客には、僕たちが3人の普通の男たちであると伝わるように期待している。自分たちの中に何か特別なものを持っているのは僕らだけじゃない。人々が、僕ら全員もしくは誰か一人に自分を重ねて、その中に彼ら自身を見つけてもらえるといいね。それとまた、僕らがしたことからインスピレーションを得て、自分たちの人生の障害を乗り越え、自分たちにも特別なことができると知ってもらえることを期待している。

スペンサー・ストーン:
質問の答えを独占したな(笑)

アレク・スカラトス:
本は「ちょっと面白い」と思うよ。あの日に起きた事と、僕らの人生全体についての視点が混在しているから。映画は最終的なストーリーに到達するまで僕らみんなが共同で作り上げた。実際、映画作りのプロセスを通して、僕らはその日何が起きたかについて多くことを学んだよ。マルパソのプロデューサーたちがやったリサーチを通してね。出来るだけ正確にストーリーを語る上で、彼らは素晴らしい仕事をしていると思う。

————学校にいたときの小さな出来事や、彼らが軍隊で学んだことが、あの日を救う手助けになったんですよね?

スペンサー・ストーン:
そうだね、間違いなく。僕とアンソニー、アレクは、幼少時代から常に何か満たされない気持ちを持っていた。僕らの人生が自分たちをここに導いたかというのはちょっと奇妙だよ。もし誰かが今、あまりハッピーに感じられない場所にいたとしても、少なくとも今やっていることを形にすることは出来る。「大小に関わらず、今自分がやっていることはいずれ何かのためになる。無駄になんかならない。」と信じることでね。何が起きるか、スキルや経験がいつ必要になるかは決してわからないんだ。

アンソニー・サドラー:
成功と失敗を見せるのは重要だと思う。それがこの旅をとてもリアルなものにしているから。映画ではしばしば、全ての道は成功に繋がっているといった感じだけど、僕らのストーリーでは、成功や失敗のとてもリアルな要素に自分を重ねることが出来ると思う。成功と共に失敗もまた、自分が気づかない道に導く。それは、人生という旅という大きな絵の一部なんだ。

————事件の後、本を出版し、この映画の主役を演じ、想像もしなかった人生を生きていると感じていると思います。演技以外で、今後どんなことをしたいと思っていますか?

アレク・スカラトス:
正直言って、僕らはただその日その日をこなしている感じだ。特にこの2年間の人生はローラーコースターのようだった。次に自分たちが何をするかは分からないし、想像することも出来なかった。だから僕らは一日ずつこなそうとしている。そして、それがどこに向かうかを見てみるんだ。でも、僕らは間違いなく演技にトライするだろうね。

スペンサー・ストーン:
人生で僕がやることがなんでも、ポジティブなものであることを期待している。でも、アレクが言ったように、僕らは一日一日を生きている。もし僕が、クリント・イーストウッドから何かを学んだとしたら、その瞬間をただ生きることだ。あまり先のことを考えずにね。明日何が起きるかわからないし、僕が何をするかわからない。だから、僕はただ自分の目の前にあることに全力で集中するんだ。

アンソニー・サドラー:
イーストウッド監督は、僕らに新しいプラットフォームを与えてくれた。自分たち自身を演じて、自分たちのストーリーを語るために。だから、僕らは今その場所にいる。演技をやることを追いかけようとする以外にね。そこでは、僕らは、どうやってそのプラットフォームを前向きなやり方で利用し、ポジティブなメッセージを奨励し続けられるかを見つけようとしている。

————あなたたちが自分で自分の役を演じると知る前、誰に自分自身を演じてもらうことを夢見ていましたか?

アレク・スカラトス:
僕はザック・エフロンに自分を演じてもらいたかった。

スペンサー・ストーン:
クリス・ヘムズワースだね。

アンソニー・サドラー:
マイケル・B・ジョーダンだね。

巨匠クリント・イーストウッド「映画は感情表現の芸術だ」

演出中のクリント・イーストウッド監督
©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

「アメリカだけじゃなく世界中においてその状況はタフだ。僕らがパリで撮影しているとき、似ている状況があった。スペインやカンヌ、いろんな場所でね。僕らは異常な時代にいるように感じる。それを考え過ぎたら、落ち込むことになる。でも前に進まないといけない。この出来事は、そういったことにとても素晴らしい結末をもたらしたし、それは語る上で価値のあるものに思えるんだ」

87歳を迎えても尚、現役の監督として新たな挑戦を続けるトップランナー。「映画は感情表現の芸術だ」との持論を語り、「それでも前に進まなければならない」と映画を撮り続ける。

映画『15時17分、パリ行き』(ワーナー・ブラザース映画 配給)は全国公開中


©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT INC.

映画『15時17分、パリ行き』公式サイト wwws.warnerbros.co.jp/1517toparis
15時17分、パリ行き ブルーレイ&DVDセット(Blu?ray Disc)をAmazonで購入する

モバイルバージョンを終了