作品の感想を問われた西川監督は、「赤ん坊の泣き声から始まる最初のシーンが、すごく良いと思いましたね。真っ白な空間なので、汚れた少年の手と、生まれて間もない玉のような赤ちゃんとのミスマッチな組み合わせに、幸せな家族の話ではなくて、これから危険な事が起こると予感せずにはいられませんでした。そういう導入部分のプランがすごく上手くて、冒頭から非常にワクワクしました」とコメント。
また、あまり知られていないデンマークの社会状況に触れた作品とあって、「一般的には社会福祉のシステムも成熟した国という認識があったので、こんなにも汚れて澱んだ一面があったのか、と思いました。でも、どこの国の社会でもそういった暗部はあると思いますし、そういう意味では別にデンマークに特化した話ではないと思いました。ですので違和感は無かったですね。日本でもあり得ることだと思います」と述べた。
映画『蛇イチゴ』『ディア・ドクター』など社会派な側面を持つ作品を世に送り出してきた監督だけに。「(自身は)特に“社会派”を意識している訳ではないのですが、 現代劇を描いていると、自ずとそういった側面が入ってきてしまいますよね。自分が生きている時代、まさに“今”は、教科書だけではわからないので、『光のほうへ』のような現代社会を描いている作品が、配給されるのは良いことだと思います。遠い国の現代の映画を、もっと多く日本で公開して欲しいですね。ビジネスももちろん大事だけど、国と国が繋がるツールとして映画は有効だと思います」といった持論を展開。
そして映画『ゆれる』で題材にした“兄弟”を描くことについてこう語った。「これも意識している訳ではないのですが、兄弟は描きやすい。同じ母親から生まれ、同じ環境、同じ条件のはずなのに、当たり前ですが、全く違う。それは他人同士の関係よりも比較しやすいですよね。切るに切れない“枷”のある関係性を、男兄弟というモチーフとして選んだに過ぎないです。兄弟に限らず、色々な関係性に挑戦してみたいですね。ソフトでわかりやすい映画が最近は多いですし、それが決して悪いというわけではないのですが、映画の“多様性”が失われるのは怖いことです。作り手側も勿論ですが、観る側も色々なものを受け入れる“お皿”を大きく育てていって欲しいと思います」
原題=SUBMARINO
日本公開=2011年6月4日
配給=ビターズ・エンド
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