佐藤健、小松菜奈、森山未來が共演した映画『サムライマラソン』完成披露イベントが開催され、レッドカーペットに佐藤、小松、森山をはじめ、染谷将太、青木崇高、竹中直人、小関裕太、木幡竜、バーナード・ローズ監督が顔を揃えた。主演の佐藤を筆頭に「衝撃の現場で…。まさかこんなことになるとは」と撮影を振り返った。
日本のマラソンの発祥といわれ、160年以上にわたり受け継がれている史実「安政遠足(あんせいとおあし)」を舞台とする土橋章宏著の小説「幕末まらそん侍」(ハルキ文庫)を原作にした、東京2020公認プログラム作品。
主演の佐藤は表向きは平凡な侍だが、実は幕府のスパイである唐沢甚内(からさわじんない)演じており、「海外の方と仕事をしたいという気持ちがあって、このチャンスは逃したくないと飛び込みました。でも衝撃の現場で…。まさかこんなことになるとは」とニヤリ。それもそのはず、バーナード監督は現場でのパッションを最優先する演出を採用しており、佐藤も「まずは台本を気にするなと。セリフも言いたくなければ言うな、というスタンス」と独特なメソッドを振り返ると、「だから僕はあまり喋りませんでした。役としてセリフを言いたくなかったので。動きで見せるように頑張りました」と、役としての立ち振る舞い明かした。
姫を手に入れるためにはどんな手段もいとわない傲慢な侍辻村、平九郎(つじむらへいくろう)を演じた森山は、共演者から絶賛の嵐。佐藤から「森山さんはご自身でセリフを考えていた。だから脚本家はほぼ森山未來だと思う」とリスペクトされると、自身も「走って、馬に乗って、泳いで…一人トライアスロン状態」という奮闘ぶりを熱弁。さらに青木が「しかも(森山は)乗馬初挑戦で、それができるのが森山未來!」と持ち上げるも、アドリブで蹴り飛ばされたことを挙げて「やった方が覚えていなくても、やられている方は覚えているんだよ!」と恨み節で笑いを誘った。
絵描きになる夢を持ち、藩を抜け出そうとする“じゃじゃ馬姫”の雪姫(ゆきひめ)を演じた小松は、撮影の1か月前から殺陣のトレーニングを行うも、撮影現場ではバーナード監督の洗礼を受けたといい、「あんなに練習したのに現場でバッサリとカット。シンプルなシーンになって良かったけれど…でもショックでした」と舞台裏を告白。すると佐藤は「めちゃくちゃ練習していたよね?」と小松の努力を労う一方で、「でもそれは段取りだから!監督が望んでいるのはホンモノだから!」とバーナード監督のリアル志向を笑いに転化すると、バーナード監督も「実際は刀を抜いたらダンスをするのではなく、直接敵に斬りつけて終わりでしょう?」とリアリティ重視を強調し、佐藤は「その通りです!」と即答して笑わせた。
藩一の俊足を誇る足軽、上杉広之進(上杉広之進)役の染谷は、「自分がサムライの中で一番の俊足という設定にまず驚いた。日本人の監督だったら絶対に僕をそこにはキャスティングしないはず!」とバーナード監督ならではの視点に驚き、さらに「撮影を待っていたら、バーナード監督から『君の出番は終わった。待っている時の君が良かった』と言われた。だからその日は何もせずに終わりました」と、驚きのエピソードを披露した。
佐藤演じる甚内の腰痛持ちの上司、植木義邦(うえきよしくに)を演じた青木は、バーナード監督との現場を「テストなしで撮って行くスタイルなので、茂みに隠れるシーンでは誰もその茂みの奥に何があるのかをチェックしていない。だから飛び込んで思い切り転びました」と苦笑いしながらも、「監督の指示ならば、たとえ日の中、水の中!」と役者魂を燃やしていた。そんなバーナード監督の「新鮮なファーストテイクというものは一度しか撮れない。だから初めからカメラを回す」というこだわりの一発本番スタイルに対して、隠居予定だがもう一花咲かせたいと願う老侍、栗田又衛門(くりたまたえもん)役の竹中は、「テストなしの本番という撮影は緊張感も相まって興奮しました。僕が静かな芝居をすると、バーナード監督が『もっとテンションを上げて!』という。即興性を求めていく刺激的な現場でした」として、楽しそうに振り返った。
確かな信念を持って戦いに参加する若い侍・三郎を演じた小関は、共演シーンの多かった隼(はやぶさ)役の木幡から、「(小関から)飲みに連れて行ってほしいという誘いがあった。でも飲み会の最後に呼ばれてお金だけ払って帰るということもあった」と暴露される場面も。小関は、「馬に乗って相手を斬りに行くというワンシーンワンカットの撮影が午前中に終わってしまい、残りの時間は反省する事しかなくて、時間があるものだから反省しすぎてしまって…」と照れ顔を見せるも、森山から「だから木幡さんを食事に誘ったりしたんだね」と心境を察してもらうと、小関は「一緒にお風呂に入ったりしながら」と、仲良しすぎるエピソードを披露して会場を沸かせていた。
ステージでのトークセッションとレッドカーペット後はTOHOシネマズ 六本木のスクリーン7にて、完成披露試写会の舞台挨拶を実施。「マラソン」シーンの過酷さを佐藤は、「たくさん走りました。撮影の規模自体が日本映画にはないスケールだったので、自然と走る距離も長くなる。『地平線まで走ってくれ』と言われる日々でした。かなりのスピードで走るシーンを6分くらい長回しで撮影ということもあって、正直ちょっと舐めてましたね…」と反省の弁。紅一点の小松が「自分の体力のなさを痛感したけれど、みんなと一緒に走れて楽しかった」と笑顔を見せると、森山も「そもそも山育ちだから、山が似合うよね!」と太鼓判。小松は「伸び伸びとできました。皆さん優しいし何をして怒らないから」と終始ニッコリだった。
そんなキャストのやり取りをにこやかに眺めていたバーナード監督は、で「皆さんそれぞれ役者としてスタイルが違うし、演じる役も違うけれど、最強のキャストに恵まれました。素晴らしいアンサンブルが生まれており、本当に皆さんの演技に感服」と手放しで絶賛。最後に佐藤は「これまで様々な現場で経験してきた常識が一切通じない、何もかもが初めての挑戦でした。天候も関係なくどんどん撮影するので、繋がりが不安だったけれど、まったく気にならず。今まで自分たちがしてきた『天気待ち』の時間は何だったのかと…」とカルチャーショックを告白しつつ「新しい事に対してもがきながらも、いつも以上に役と向き合ってみんなで力を合わせて生み出したという感のある作品。新時代の時代劇として楽しんでほしい」と公開に向けてアピールした。
映画『サムライマラソン』(ギャガ 配給)は2019年2月22日[金]よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開