『Fukushima 50』佐藤浩市、東日本大震災は「絶対に忘れてはいけないこと」
俳優の佐藤浩市が、主演映画『Fukushima 50』(読み:フクシマフィフティ)のクランクアップ会見に出席し、「人間には“忘れなければ生きていけないこと”と、“絶対に忘れてはいけないこと”の二つがあると思います」と前置きし、東日本大震災は「絶対に忘れてはいけないこと」だとして本作に込めた思いを語った。共演の渡辺謙も、この企画をすごく高いハードルだと分析していたが、それでも「佐藤浩市とならばすごく高いハードルに臨める」と述べていた。
2011年3月11日、午後2時46分に発生した東日本大震災。巨大津波は原発を飲み込んだ。その現場で何が起きていたのか。真実を明らかにしていくという。英米のメディアは、原発事故の現場に残った彼ら名もなき作業員たちのことを“Fukushima 50”(フクシマフィフティ)と報じた、そのことが作品のタイトルになっている。
原作は、ジャーナリスト・門田隆将著のノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」。監督は『空母いぶき』で佐藤と、『沈まぬ太陽』で渡辺と、タッグを組んだ若松節朗だ。本作で佐藤が演じるのは福島県出身であり福島第一原子力発電所1、2号機当直長・伊崎利夫。渡辺が演じるのは、福島第一原子力発電所の吉田昌郎所長。ふたりの共演は、映画『許されざる者』以来9年ぶりとなる。
役作りについて、佐藤は「放射能について、その意味合いを理解しながら、その場にいる方々を演じることになる。浅いながらも知識をつめこんでいくしかなかった。(脚本の流れ通りの)順撮りで撮影するなかで紡いでいきました」と語り、撮影を経て今、「実際にあの場にいらした方の気持ちに寄り添うのは到底無理なこと」だと慎重に言葉を選び気持ちを吐露しつつも、「ただ、役者の顔つきが変わるのは技量とは別なのだと感じました」とも。
渡辺も「とてもプレッシャーのかかる役でした。と言いますのも、僕以外(のキャラクター)は実名とは変えておりますが、吉田氏だけはご遺族の許可を得て実名なのです。緊急対策室でお仕事された方が何名か撮影の現場にいらして、映像には残っていない吉田さんについて伺うことができたことはとても参考なりました」と振り返った。
渡辺は震災以降、三陸の三県の避難所を周り、問題点と現実の差を理解していたつもり。「しかしながら福島には、エンタメとして力を貸すことが出来ていませんでした。時間はかかりましたけれども、この作品を世に送りだすことができました」と話せば、佐藤は「まだ何も終わっていない。始まってもいないのかもしれない。東日本大地震について自分も含めてですけど、今一度考えてもらいたい」のだと真摯に話す。
また、渡辺も「誤解を恐れず話しますが」と前置きし、映画『硫黄島からの手紙』の際に、「自分を含めてこの国の民意は、(事実や出来事を)理論的に検証すること、その結果後世に何を残していくか考えること」があまり上手ではないと感じたという。だからこそ、この作品により、今を生きる人々へ呼びかけていきたいのだという意気込みが感じられた。
会見には、本作プロデューサーの水上氏、椿氏も同席。「後世に残し、伝えていくための作品として、日本映画の潮流のターニングポイントとなる作品となることを信じています」と締めくくった。
映画『Fukushima 50』(松竹、KADOKAWA 配給)は2020年公開 → 2020年3月6日[金]より全国公開
©2020『Fukushima 50』製作委員会
映画『Fukushima 50』予告編
©2020『Fukushima 50』製作委員会
映画『Fukushima 50』公式サイトwww.fukushima50.jp
佐藤浩市主演×若松節朗監督、映画『Fukushima 50』3.11最前線で戦い続けた者を描く
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