オダギリジョー監督『ある船頭の話』を饒舌に語る
オダギリジョー監督が映画『ある船頭の話』(英題 They Say Nothing Stays the Same)の完成披露試写会に来場し、「いつもより何倍も緊張する」と言いながらも挑戦作について饒舌に語った。本作は近代産業化とともに橋の建設が進む山あいの村を舞台に、川岸の小屋に住み船頭を続けるトイチ(柄本明)の人生を描く。
この日は主演の柄本明をはじめ川島鈴遥と村上虹郎も出席し、作品のイメージカラーである「赤」と「黒」の服装で登壇した。柄本が「これは偶然ですか?!」とトボけてみせて、場をなごませた。
それもそのはず、最も緊張の面持ちだったオダギリ監督は最初のご挨拶で「普段は俳優として舞台挨拶に立つことが多いので、監督として立つことにすごく緊張しています」と自身の心境を口にするほど。それから「今日初めて一般の観客に観て頂く機会でもあるので、どういう反応があるのか不安であり心配ですが、期待もあります。いい部分だけを周りの方にお伝え頂ければと思います(笑)」と緊張混じりの笑顔を見せる。
そして、本作のキャスティングについて「ちゃんと事務所を通したと思います」と冗談交じりに話して「自分の好きな方々に集まっていただきました」と話す。
続けて、世界的撮影監督であるクリストファー・ドイルの撮影は「クリスは僕らが気付かないような日本の美しい風景をカメラに収めてくれた。テスト撮影をしないというのは、クリスの考えなんです。日本で撮影しながら日本ではないような風景を捉えてくれている」と称え、衣装デザインを務めたワダエミも「日本の宝のような方。色んな生地を持ってきて衣装を考えてくれて、この作品をすごく大切にしてくれた」とスタッフへの感謝の意を述べていた。
さらに、第76回ヴェネツィア国際映画祭のヴェニス・デイズ部門に正式出品が決定したことについて「イタリアの監督協会が選んでくれている部門というのがまず嬉しい。身が引き締まります。商業性やエンターテインメント性ではなく、作家性を重視する部門なので。どうしても日本では“俳優オダギリジョー”というフィルターついてしまいますが、そういうフィルターがない形で評価してもらえたことも本当に嬉しいです」と選出への喜びを語った。
この日のイベントの締めのご挨拶では「二つお願いがあります」として「一つ目は今の日本映画を観なれている人には観づらい作品かもしれない。でも、そこに挑戦したかったという思いがあり、さらにそれを面白がってくれるスタッフが集まった。色んなタイプの映画があるべきだと思いますので、この作品で何かを感じ取ってくれたら嬉しいです」と語り、「二つ目は画づくりには徹底してこだわり、音の配置も細かくやっているので、劇場で観ないとこの映画の良さは伝わらないと思う」と自身の挑戦についてアピールした。
たくさんのお客様、ありがとうございます。今日はよろしくお願いします。撮影現場が過酷でしたね。監督の思い通りの場所だと思うのですが、朝から晩まで舟を漕いで大変でしたね。舟を漕ぐのは上手くなったのですが、川の流れが強く牽引してもらわないと進めないことがありました。
(ヴェネツィア国際映画祭選出は)大変に光栄なことだと思っています。二度目の参加なのですが、この普遍的な物語であり日本的な作品が海外の方にどのように伝わるのか楽しみです。
初めまして。撮影中は演じることに精いっぱいで、こんなかたちで素敵な先輩たちとお客様の前で舞台挨拶に立てて嬉しいです。
>村上さん
「初めまして」っていいですね!
撮影がほとんどテスト撮影なしで進んでいたのですが、私には初めての経験でした。柄本さんは後姿が印象的。背中から寂しさや孤独感を感じられて、やっぱりすごい方なんだなと思いました!
>柄本さん
ありがとうございます!(と一礼)
※初の舞台挨拶である川島さんを気遣って柄本さんと村上さんがフォローしていた。
初めましての方もそうでないかたもよろしくお願いします。(撮影が過酷で)何をお話ししたのか覚えていません(笑)。僕も尊敬している先輩の方々やスタッフが集まり、何より柄本先生が出ずっぱりで出演されている作品は本当に贅沢な時間だと思います。オダギリ監督が映し出した世界をお楽しみください!
第76回ヴェネツィア国際映画祭ヴェニス・デイズ出品作
映画『ある船頭の話』(キノフィルムズ配給)は2019年9月13日[金]より新宿武蔵野館ほか全国公開
© 2019「ある船頭の話」製作委員会
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