白石和彌監督、佐藤健主演『ひとよ』で「しっかり家族を描こう!」
俳優の佐藤健が主演映画『ひとよ』ジャパンプレミアにて、同作撮影の忘れられないエピソードを語った。メガホンをとった白石和彌監督は作家としてステップアップするためにも「しっかり家族を描こう!」との決意を明かしていた。こちらの記事と写真は後日更新します。 → 動画を含めて更新しました。
この日は、主演の佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、音尾琢真、佐々木蔵之介、白石和彌監督が客席通路を歩いてからステージに登壇! 割れんばかりの拍手と黄色い歓声に包まれる中、イベントはスタートした。
本作は、昨年国内賞レースを席巻した『孤狼の血』などを手掛けた白石監督の最新作。「家族」というテーマを初めて真正面から描いた白石監督は、「これまでは『凶悪』や『日本で一番悪い奴ら』など、割と疑似家族を描いていたが、どこかで血のつながった家族の話を描なければ、作家としてステップアップできないと思っていました。そんな時に、制作会社のROBOTの長谷川プロデューサーに声をかけてもらいました。そこで脚本の髙橋泉さんも含め皆で話したら、それぞれ家族に抱えている思いや傷があったので、『ここでしっかり家族を描こう!』という話になりました」と振り返った。
稲村家の三兄妹を演じた佐藤(次男・雄二)、鈴木(長男・大樹)、松岡(長女・園子)は、いずれも白石組に初参加。
白石監督作への出演を熱望していたという佐藤は、「本作のお話が来る前から、もし白石組に参加したらこういう役作りをしていこう、と一人で想像していたくらいです。念願叶いました」と告白。今回、白石監督も佐藤へ熱烈ラブコールを送っていたといい、監督のベタ褒めに佐藤が照れる場面も。また、「具体な役をイメージしたわけではないが、今より体の線を太くして体内を汚そうと考えていました」と佐藤が語ると、松岡が「汚いですよ~、今回の佐藤さん(笑)」と、これまで演じてきた主人公然としたキャラクターとは一味違う、今回の佐藤の演技を会場にアピールし、兄妹の掛け合いで会場を沸かせた。
コミュニケーションに苦手意識を持つ難役に挑戦した鈴木は、「『日本で一番悪い奴ら』や『凶悪』を観たときに、それがずっと残っていて、事務所の方にも『いつか白石組に参加してみたい』と伝えていました。普段は活発な役だが、本作の大樹みたいに内向的な役をやらせてみようと思ってくれたのが嬉しいです」と、改めて感謝の気持ちを語っていた。そこに再び松岡が「今まで観たことないくらい一番頼りない鈴木亮平です!“西郷どん”はどこいった!?(笑)」と乗っかり、観客は大爆笑。
一方、白石監督は「試写で本作を観た方から、『松岡茉優はすさまじい』って言われます」とフォローすると、松岡は照れ笑いを浮かべていた。続けて、佐藤と鈴木のこれまでの役柄とのギャップのある配役について、松岡が逆質問。白石監督は、「これまでの作品を観ていて、お二人とも素晴らしい役者さんですし、単純に一緒に仕事をしてみたいと思いました」と語ると、松岡は「そんな三兄妹の新しい形を観られるというのも、本作のポイントです」としっかりアピールした。
続いて、三兄妹の母親・こはるを演じた田中裕子との共演について、佐藤は「芝居の中で目が合ったときに、理屈じゃなく鳥肌が立ちました。田中さんが皆さんから大女優と言われる理由を、言葉じゃなく体で感じられたのが本当に貴重な経験でした」と語った。
鈴木は「錚々たる先輩方からも、『いつか田中さんとやるといいよ』と言われていました。今回は特殊な親子なので、撮影の合間なども、常に僕らと打ち解けるわけではなく、ちょっとしたぎこちなさを感じられる距離感を保ってくれたのが非常に助かりました。すごい役者さんというのは、自分だけじゃなくて一緒に居る状態から演技をしやすい状態を作ってくれるんだなと思いました」と、田中の役者魂に感激した様子。
松岡は、こはると園子が一緒に布団に入るシーンを振り返り、「田中さんがものすごくぎゅっと抱きしめてくださいました。思い切って深呼吸してみたら、私のお母さんとは違うんですが、“お母さんとの匂いだ”となぜかすごく実感しました。それってお芝居じゃない気もして、お芝居とそうじゃない部分の境界線が分からないくらいの気持ちになりました。田中さんとのシーンは、そういう気持ちになることが多かった気がします」と語った。
白石監督作と言えば欠かせないキャストが音尾。本作で通算9作目の白石監督作への出演だ。「9作目ですよ。先ほど改めて言われてよろけましたけども…」とタジタジ。佐藤がそこへ「次に一回でも声をかけられなかったら?……と怖くならないですか?」と質問すると、音尾が「そう!もうここまでいくと、その時の最新作が次回作オーディションみたいな気持ちになるんですよ。いつかバッサリ僕が切られてしまうんではないか…」と心配そうにコメント。そこに松岡が「“旅立ち”ですね。だからそうならないように、毎年お歳暮を贈られているんですか?」と乗っかり、妄想は次第にヒートアップ! 会場は笑いに包まれるのだった。
改めて本作の現場の様子について音尾は、「変わらない部分もありつつ、今回も進化した演出法をしていると感じました。僕自身の役柄でいうと、たいてい白石監督作だと、殴ったり蹴ったりの役が多かったが、今回はNO暴力でいいやつでした(笑)」と振り返った。
また、稲丸タクシーの新人ドライバー・堂下役を演じ、佐藤らと同じく白石組へ初参加となった佐々木は、「50歳の新人タクシードライバーでギャンブル・酒もやらない良い人…。もう絶対闇しかないじゃないですか(笑)」と、笑いを交えつつコメント。また、「衣装合わせのとあるタイミングで、『これこそ白石組だな!』っていうシーンがあった。ネタバレになるので言えないですけど」意味深な表情を見せ、これから作品を観る観客の期待感を高めていた。そんな今回の撮影は監督も非常に楽しんだようで、「夢のような時間でした。これからの監督としてのキャリアでも、豊かな時間だったと思います。これだけのキャストにやっていただけたら、ある意味演出する側の監督としてはとても楽ですよね」と、満足げに語っていた。
そして、本作がある「一夜」(ひとよ)の事件に翻弄され、人生が変わってしまった稲村家の面々を描くことにちなみ、最後の質問として、それぞれの思い出深い「特別な一夜」を語るコーナーへ。音尾が同じ高校の後輩だという白石監督は、「お互い監督と俳優になったある日、どうしても会いたいと連絡が来まして。飲んで語り合った夜は忘れられないですね。ですから、旅立ちとかないですよ、音尾くん!」と、先ほどの話にかけて語り、二人の固い絆を見せていた。そんな音尾は、撮影の時に白石監督と飲みに行った夜について、「監督は映画好きだから映画の話をすごいするんですが、『今年は富士山に登りたい』と言っていました。僕がスケジュールを空けるしかないと思って、登山靴などを全部準備して、日にちも決めて…でも登る前日に白石監督が風邪を引いて延期になりました(笑)」とエピソードを披露。白石監督とリベンジを誓い合っていた。佐々木は、「家業を継ぐのを諦めて、この仕事をやると決めた日が特別な一夜です。親が思ったように子供は育たないんだなと、正にこの映画のことですね」と感慨深げ。
一方、松岡は「佐々木さんは、子役からやってる私には田中さんと同じく神様みたいな存在。劇中で泥酔した園子がタクシーで堂下に送ってもらうシーンがあるんですが、まさか佐々木さんの頭を引っ張ったり叩いたりする日が来るとは…。緊張するやら興奮するやら、忘れられない一夜でした」と語っていた。鈴木は、「佐々木さんと同じく、この俳優の仕事をやろうと決めた夜です。上京して大学で演劇サークルに入って、初舞台初日の本番が終わった時、お客さんの見送りに出たとき、最初に出たお客さんが泣いていて…『俺、これを一生やって行こう』と思いました。その時の役は坂本龍馬役でした」と振り返ると、音尾が「西郷さんに飽き足らず坂本龍馬もですか!?(笑)」とつっこみ、会場は笑いの渦に包まれていた。佐藤は、「本作の現場で忘れられない夜がありました。蔵之介さんに全力飛び蹴りをした夜です。台本にもあるシーンですが、あれは忘れられない。佐々木さんに事前に謝って、全力でいかせてもらいました」と感慨深げに語り、会場からは驚きと期待の声が上がった。
これから作品を観る観客に向けて白石監督は感謝の言葉を交えつつ、「家族の形って色々あると思いますが、本作を作って、僕自身の家族についても色々考えました。本作を観て、ぜひそれぞれのご家族の方に想いを馳せて頂ければいいなと思います」とコメント。最後に佐藤が「僕も本作の撮影をしていて、『そういえばしばらく家族と連絡とってなかったな』と考えました。家族はそれぞれ皆さんの唯一無二の存在ですので、ぜひご家族に想いを馳せる時間にしてもらえればと思います」と締めくくり、大歓声の中イベントは幕を閉じた。
映画『ひとよ』(日活配給)は2019年11月8日[金]より全国公開
©2019「ひとよ」製作委員会
映画『ひとよ』ジャパンプレミア
https://youtu.be/fjlmh84LlOs
映画『ひとよ』予告編
©2019「ひとよ」製作委員会
ひとよ(佐藤健主演×白石和彌監督) – 映画予告編
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