細田守監督『竜とそばかすの姫』アフレコ秘話明かす
細田守監督が9月11日、映画『竜とそばかすの姫』の大ヒットを記念しTOHOシネマズ 日比谷にて、ティーチインと大ヒット御礼の舞台挨拶に出席。この日は、女優の宮﨑あおいがサプライズでお祝いに駆けつけて、監督に花束を贈呈した。観客動員数は423万人、興行収入が58,7億円(9月10日)で細田監督にとっては最大のヒット作品となっている。
映画『竜とそばかすの姫』は、第74回カンヌ国際映画祭公式「カンヌ・プルミエール」部門に選出された。同映画祭にてワールドプレミア上映には、現地に監督が赴いていたため、本作の(日本での劇場公開)初日はリモートで参加。監督にとって、この日が映画公開後初めて舞台挨拶となり、「まるで今日が初日のような気持ちでおります。皆さんにこうやってお会いできて、とっても嬉しいです」と笑顔を見せた。
本作は、50億人が参加するインターネットの世界<U(ユー)>で、一人一人がAs(アズ)というアバターを持ち、ボディーシュアリング技術で一心同体のように繋がることで、まったく別の人生を生きて、世界を変えられる空間を舞台に展開。自然豊かな高知の田舎に住む17歳の女子高校生・内藤鈴(すず)の物語となっている。
質問:細田監督が一番最初にこの映画を企画して思いついたのはどこだったのかを教えていただきたい。
細田守監督
「美女と野獣」の物語がベースになっております。どのような切り口で現代に作ればいいのかと考えた時に、インターネットの世界で「美女と野獣」をやればいいんだ!ということを5年前に思いついきました。僕は野獣の二面性が好きで、暴力的な外見と中身だとか、それはインターネットに関わっている生身の僕らの二面性に近いなと思いました。その切り口でやると面白いのでは無いか?と気がついたことがきっかけだったと思います。
質問:以前監督がインタビューで、「最後に野獣が姿を変えてしまうことがもったいない」とおっしゃっていました。本作で姿を変えるか否か決め手は?
細田守監督
今回は野獣だけではなく、美女も姿を変えるという変化があるほうがいいのではないかと思ったんです。いつも引っ込み思案なすずが、インターネットのなかではベルとして凜々しく行動する姿が、実際の姿のすずにも影響を与えていくようになり、すずもベルのように凜々しくたくましく、そしてやさしくなる。その変化を見せたいと思いました。
質問:今日で十回目ですけど一つだけわかりません。<U>で姿を隠す人とそのままの人がいるのはなぜなのか?と思っています。もしも理由があるようでしたら教えていただきたいです。
細田守監督
なるほど!そうですよね。僕らは今、現実とインターネットの世界という二つの世界で生きていて、姿や見え方が違うのはこの世界の面白いところだと思うんです。人間を一面的に見るのではなく、実は人は二面性、三面性を持っていて、それを発信する場がある現代はとても面白い。インターネットの世界には僕らを自由にしていく側面を持っているのではないかなと思いました。十回ご覧になると、そこに何かあると気づいてくださるってことがありがたいです。
質問:劇中の<U>は人生を何度もやり直せる世界で現実では不可能なことを可能にするみたいな表現がありました。実際にインターネットを介して自分の人生を大きく変えている人がいると思うんですけども、監督の中でどのようにイメージされたのでしょうか。
細田守監督
インターネットで便利になっているぶんだけ、現実世界での抑圧感が強くなり、いろいろな側面で自由にいられない人も一方で増えている気がしています。特にお子さんや若い人は、「本当に自分が思うままに生きていけるのだろうか」ということがあって、そのなかでもアニメーションを作る者としては、若い人を勇気づけたいというか、何かこう背中を押して、可能性に向けて進んでいってもらえるような役割が必要だと思うんです。そういう中で、どういう状況にある人でも、決してそれだけではなくて、きっと「良いふうになっていくよ」という気持ちを込めて作ったところがあります。
そして、観客へのメッセージとして、細田監督は「コロナ渦だからこそ、こうして自由の大事さや抑圧から解放されることがいかに大事かということを改めて感じると思います。そのために映画があると思うと、こういう状況下でも皆さんたくさん観に来てくださる作品であって、作り手としては本当に光栄に思います。本当に皆さんありがとうございます」と話す。
最後に宮﨑が登場し、細田作品「バケモノの子」での自身と役所広司との共演を振り返った。そして、好きなシーンとして、「すずちゃんが助けに向かうバスの中でのお父さんとの電話でのやりとり」をあげた。
すると、細田監督は同シーンのアフレコ秘話を明かした。「アフレコの時に、絵で作った間合いで一度やったんですけど、それ以外に絵を止めて(すずの父親役の)役所さんと(すず/ベル役の)中村さんの自然な間合いでやってもらったんです。そしたら間合いを含めてものすごく現実感が出たんです。「間」が違うだけでこんなに豊かに、存在感が湧き上がってくるんだということ、それは素晴らしかったです。それであのシーンは、想定より20秒ぐらい伸びたけど本当に素晴らしかったです」とし、さらに「本当に役所さんお見事!」と称えていた。
映画『竜とそばかすの姫』(東宝 配給)は2021年7月16日[金]より全国公開中
映画『竜とそばかすの姫』公式サイト
公式SNS Twitter | Instagram | facebook
細田守監督『竜とそばかすの姫』発想の原点は”美女と野獣”
夏休み映画2021年8月公開の映画から編集部が選んだ6作品