第37回東京国際映画祭ガラ・セレクション部門招待作品として選出された、映画『サンセット・サンライズ』公開初日舞台挨拶が1月17日、東京・新宿ピカデリーで実施され、菅田将暉、井上真央、中村雅俊、三宅健、岸善幸監督、宮藤官九郎が上映後に登壇した。
宮藤官九郎が脚本を担当し、2023年の映画『正欲』で第36回東京国際映画祭最優秀監督賞と観客賞を受賞した岸善幸が監督。ともに東北出身でもあるふたりの異色のコラボレーションから生まれた本作。映画『あゝ、荒野』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞ほか数々の映画賞を受賞して以来7年ぶりに岸監督とタッグを組んだ菅田将暉を主演に迎え、都会から移住した釣り好きサラリーマン⻄尾晋作と、宮城県・南三陸で生きる住民との交流や、人々の力強さや温かさをユーモアたっぷりに描き、その背景にあるコロナ禍の日本、過疎化に悩む地方、震災などの社会問題と向き合いながら豊かなエンターテインメントに転化させたヒューマン・コメディだ。
本作のイベントで、菅田将暉、井上真央、中村雅俊が顔を揃えるのは今回が初めて。菅田は「現場で中村さんと最初にお芝居したのが、僕(晋作)が家を借りることになって、電話がかかってきて、電話に出たら遠くに中村さんと井上さんが双眼鏡を持ちながらこっちを見ているというシーンでした。現場でも本当に遠くに(中村さんが)見えたんですけど、(指と指を狭むポーズをしながら)こんなんで(笑)。小っちゃい中村さんを覚えています」と懐かしそうに述懐。この言葉に中村も「俺も小っちゃい菅田くんを覚えてます(笑)。その時、菅田くんを初めて見ました。それまで会ったこともないので『これが菅田か…』と思って見ていました」と初共演を振り返る。
井上は“父”中村について「いつもシュッとされているので、(役柄の衣装の)腹巻とか、ももひきをつけている姿が想像できなかったんですけど、いざ現場に現われるとすごく似合ってらっしゃって(笑)。でも方言については雅俊さんはネイティブなはずなのに、すごく現場で練習されていて…」と現場での様子について明かす。宮城県出身の中村は「俺ね、ネイティブの宮城弁をしゃべれると思ったら、意外と難しいんですよ(苦笑)。俺は女川で、(本作の舞台の)気仙沼とはビミョーに違っていて結構、練習しました。自分で言ってて『あれ? これネイティブじゃないな…』と思いながら」と苦笑交じりに語った。さらに中村は「最初の問題は『俺が漁師に見えない』というところから始まって…」と振り返ったが、岸監督は「ご協力いただいた漁師さんたちになじんでいただいて、魚のさばき方とかを一緒にやっていくうちにどんどん漁師に見えてきました」と称賛を送る。
映画『サンセット・サンライズ』特別映像[キャラクター編]
©楡周平/講談社 ©2024「サンセット・サンライズ」製作委員会
宮藤の脚本は、様々な小ネタが満載だが、菅田は「そういうの(=小ネタ)がいっぱいで、冒頭のアニエスベー(※釣りのエサのイソメが『アニエスベーのロゴに見える』というギャグ)に始まり…これ、どうやって撮るんだろう?って思っていたら、すごく大変だったみたいです、現場で(笑)」と指摘。宮藤は「アオイソメがアニエスベーに見えるなって、前から思ってたんです(笑)。どうやって撮るんだろうと思っていましたけど、(完成した映画を)見たら完璧」と製作陣を称賛。岸監督は「実は、CGですごく大変だったんです(苦笑)。イソメの口が開いてエイリアンみたいになるところまで想定したんですけど、流石にそこまではお金がなかったです」と明かし、菅田さんも「CG部の人も発注が来た時、ビックリしたでしょうね。(気仙沼の描写の)大自然がリアルで<イソメがCG>って変な話ですね(笑)」と楽しそうに笑みを浮かべていた。
井上は、宮藤の脚本について「コメディ要素だけでなく、宮藤さんが描く、さみしさ、モヤモヤした気持ちがふっとにじみ出る瞬間、(自身が演じた)百香の最初の『キレイ…』というひと言もそうですけど、見ている人に託す感じがすごく好きです」と語り、三宅も「笑いも大好きですけど、行間を感じられる脚本だったので、『泣く』とか意識せずとも、気づいたら宮藤さんのセリフで気持ちを持っていかれることが多々ありました」と明かす。宮藤は、“モモちゃんの幸せを祈る会”のメンバーのタケを演じた三宅の現地への溶け込みっぷりも絶賛!「現場でお会いした時、金髪で真ん中がちょっと黒くなってる人がいて『絶対に地元の方だ…。地元の暴走族が来ちゃったんだな』と思ったら本物の三宅さんでした(笑)。すごくハマっていてビックリしました」と明かし、会場は笑いに包まれていた。
また、中村もデビューから半世紀以上を経て、地元・宮城県で撮影され、初めて宮城弁のセリフをしゃべることになった本作への特別な思いを口にする。さらに、共に演じるシーンはなかったものの、かつて中村の付き人を務めていた小日向文世と、初めて同じ作品へ出演したそうで「エンドロールで、名前が並んで出てくるのは初めて。特別な思いでした。すごく嬉しくて、最後のタイトルを見た時『あぁ、小日向と俺が映ってる…』と」と感慨深げに語り、会場は温かい拍手に包まれた。
菅田さんが「小日向さんが中村さんに『つなぎを借りパクされた』と楽しそうに話してました」と小日向から聞かされたという“疑惑”について、真相を尋ねると中村は「もう40何年前の話(笑)。あいつが、デカいつなぎを着てて、それがすごく良いんですよ。『小日向、それちょっと貸してよ』って言って、そのまま何かの番組に出て、返さずにいたら何十年も経っていて。『雅俊さん、あれ、どうしました?』って聞くから『あんなのどこ行ったか知らねぇよ』って言ったら『ひどい!』って(笑)」と明かし、再び会場は笑いに包まれていた。また劇中、中村と菅田が2人で朝焼けの中で歌う感動的なシーンもあるが、菅田は「気持ちよかったですねぇ。朝の気仙沼の水平線がキレイで…」としみじみと語り、中村も「感激するほど素晴らしい景色でいい感じでした」とうなずいていた。
映画『サンセット・サンライズ』特別映像[東北グルメ編]
©楡周平/講談社 ©2024「サンセット・サンライズ」製作委員会
笑いの絶えない撮影現場だったことがキャスト陣のトークからも伝わってきた本イベント。続いて2025年の“初笑い”エピソードを尋ねられると、三宅は、自身の初笑いとして、本作のライブ配信イベントでの井上のある振る舞いについて言及。「おそらくYouTubeの生配信を井上さんはやったことないからご存じなくて、僕が、配信にコメントを寄せてくれる人たちのコメントを自分の携帯で見ていたんですけど、僕のスマホを取って『私が撮ってあげる』って言い出して…(笑)。『この人、本当に天然なんだな』って笑っちゃいました。とてもかわいらしい人だなと思いました」と井上の天然でキュートな一面を明かしてくれた。
舞台挨拶の最後に岸監督は「現場も本当に笑いがたくさんあふれていて、楽しい撮影が終わりまして、なんとか現場で感じた笑いを映画として完成させたいなと思いました。今日、楽しんでいただけたら本望です」と観客に語りかけ、菅田は「みなさんのおかげで公開できて、こうして舞台挨拶ができて嬉しいです」と感謝の思いを口に。そして「(この映画を見て)晋作のように、いろんなところに旅に行くきっかけになったり、『おいしいものが食べたいな』と気仙沼や東北の地に足を運んでいただけると嬉しいです。あとは、どうかみなさま、今年も一年、健康でがんばっていきましょう!」と呼びかけ、温かい拍手の中で舞台挨拶は幕を閉じた。
映画『サンセット・サンライズ』(ワーナー・ブラザース映画 配給)は2025年1月17日[金]より全国公開
©楡周平/講談社 ©2024「サンセット・サンライズ」製作委員会
映画『サンセット・サンライズ』あらすじ
新型コロナウイルスのパンデミックで世界中がロックダウンに追い込まれた2020年。リモートワークを機に東京の大企業に勤める釣り好きの晋作(菅田将暉)は、4LDK・家賃6万円の神物件に一目惚れ。何より海が近くて大好きな釣りが楽しめる三陸の町で気楽な“お試し移住”をスタート。仕事の合間には海へ通って釣り三昧の日々を過ごすが、東京から来た〈よそ者〉の晋作に、町の人たちは気が気でない。一癖も二癖もある地元民の距離感ゼロの交流にとまどいながらも、持ち前のポジティブな性格と行動力でいつしか溶け込んでいく晋作だったが、その先にはまさかの人生が待っていた?!(2025年/日本映画/139分)
出演:
菅田将暉
井上真央
竹原ピストル 山本浩司 好井まさお 藤間爽子 茅島みずき
白川和子 ビートきよし 半海一晃 宮崎吐夢 少路勇介 松尾貴史
三宅健 池脇千鶴 小日向文世 / 中村雅俊
脚本:宮藤官九郎 監督:岸善幸『あゝ、荒野』
原作:楡周平『サンセット・サンライズ』(講談社文庫)
音楽:網守将平 歌唱:青葉市子
製作:石井紹良 神山健一郎 山田邦雄 竹澤 浩 角田真敏 渡邊万由美 小林敏之 渡辺章仁
企画・プロデュース:佐藤順子 エグゼクティブプロデューサー:中村優子 杉田浩光 プロデューサー:富田朋子
共同プロデューサー:谷戸豊 撮影:今村圭佑 照明:平山達弥 録音:原川慎平 音響効果:大塚智子
キャスティング:田端利江 山下葉子 美術:露木恵美子 装飾:松尾文子 福岡淳太郎 スタイリスト:伊賀大介 衣装:田口慧
ヘアメイク:新井はるか 助監督:山田卓司 制作担当:宮森隆介 田中智明 編集:岡下慶仁 ラインプロデューサー:塚村悦郎
映画『サンセット・サンライズ』公式サイト
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