[シネママニエラ]日本人の気質として、実在の事件を題材にすることは生々しくなるため避ける傾向にあるなかで、園子温監督は映画『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』『恋の罪』と3作続けてハードな題材を世に送り出した。そのあとだけに、本作『ヒミズ』はマイルドになっているかな?と思ったりしたのだが、いやいや園節を貫いていた。
青春映画『ハザード』(2006年)がツボにはまり、同作インタビューで人柄に魅了されて以来、園監督の作品だと知れば、欠かさず鑑賞している。筆者自身は、映画『ヒミズ』の原作である「ヤングマガジン」連載の「ヒミズ」は未読。ただし参考のために既読者から内容を聞いたが、その違いは“ほぉ”という程度のものだった。それはさておき。川のほとりにある貸しボート屋、どこかで見たぞ!と――茨城県常総市の小貝川河川敷なのでした。
住田祐一(染谷将太)、15 歳の願いは、「普通」の大人になること。茶沢景子(二階堂ふみ)、15 歳の夢は、愛する人と守り守られ生きること。そんな2 人に日常は、ある“事件”をきっかけに一変。衝動的に父親を殺してしまった住田は、唯一の願いである「普通の人生を全うすること」を諦め、そこからの人生を“オマケ人生”と名付け、世間の害悪となる悪党を殺していこうと決めたのだ。
オーディションで主演を射とめたのは、映画『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』の染谷将太、映画『劇場版 神聖かまってちゃん/ロックンロールは鳴り止まないっ』の二階堂ふみ。この2人が第68回ヴェネツィア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞を揃って受賞したのも納得の好演でした。どちらの両親もネグレクトであり、住田は茶沢の事情を知らないように描かれるが、2人とも普通の家庭・愛情に憧れる気持ちを抱いている。
茶沢は、住田を愛おしく思うことで、自分が実母に殺される可能性があるといった現実から逃避できる。茶沢が必要以上にテンションが高くウザく感じられるのも、自身の影の部分を見せないためなのだろう。そう捉えると、2人の未来を「頑張れ!住田」、「頑張れ!茶沢」と素直に応援したくなるのだった。――そして併せて、俳優としての、染谷&二階堂の今後に注目しようと思った。
【南的ツボは?】♪「弦楽のためのアダージョ」がぴったりとハマった稀有な作品
【南的見所はココ】渡る世間に鬼はなし。登場する大人たちのダメっぷり=日本の現状かも
日本公開=2012年1月14日
配給=ギャガ
公式サイト
©「ヒミズ」フィルムパートナーズ
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