周防正行監督、役所×草刈主演の映画『終の信託』で道義心を問う
[シネママニエラ] 刑事裁判のシステムを題材にした映画『それでもボクはやってない』の周防正行監督による、終末医療と尊厳死をテーマにした最新作『終(つい)の信託』が完成し、出演者の役所広司、草刈民代、大沢たかお、細田よしひことともに完成披露会見と舞台あいさつ登壇し、同作への思いを語った。
法律で裁く前に人としてどうなのか?!道義心を問いたい
同作の原作は現役弁護士である朔立木の同名小説が基になっている。周防監督は「とにかく原作の小説に出会ったことが大きかった。『それでもボクはやってない』はリアルな刑事裁判のシステムというものを伝える映画でした。今回はそのシステムの中で一人一人の人間がどう苦悩し、どう克服しようとするのか、その姿を伝えたいと強く思いました。原作小説を映画化するということも僕にとっては冒険でしたが、小説の一行目から『これを映画として観たい』と自分自身が思いまして。とにかく映画的に面白く撮れるという確信を持てたというのが、今回の映画製作の動機でした」と胸中を明かした。
周防監督は27年間で7本という寡作なタイプ。キャリアの中でも世界的なヒット作である『Shall we ダンス?』の役所×草刈コンビを本作の主演に起用した。呼吸器を患う江木秦三役の役所は「台本をいただいた時から、とても新鮮な感じがいたしました。きっと『こんな映画があるんだ』『こんな映画、観たことない』という映画ができるんだろうなと思いながら、周防組で頑張りました」とコメント。その江木の主治医である折井綾乃役を演じた草刈は「一番初めに小説を読んだ時に、こんなに切ない人はいるのだろうかと、気持ちを動かされました。ちょっと痛い人ですよね(笑)。でも、それだからこそ切実に生きることが出るのかなと考えました。こんな役ができるのかな?と、とても不安に思いましたけれども、全力投球で最後までできる限りのことをしました」と述べた。
劇中の濃厚なラブシーンに話題が及ぶと、周防監督は「作品がいいのか悪いのかしかないですから、『妻を裸にして撮っていいのか?』ということは考えていません。この映画にとって必要なシーンだからシナリオにも書かれている訳ですし、そのシーンを良いものにしたいという思いしかない」ときっぱり。
なお、感動のラブストーリーということもあり、撮影現場における周防&草刈夫妻の裏話をキャストが証言することに。
「草刈さんは今回は女優に転身して『これから女優でやっていくんだ』という気迫がありました。女優であり、周防監督の妻であるという気迫を感じました」(役所)
「微妙なやりとりで、お二人の間が緊迫する瞬間があるんです。そういう時どうしていいか分からないので見て見ぬ振りをして、余計な気を遣ったりしていました」(大沢)
「撮影中は夫婦な感じが全然しなくて大丈夫かな?と思っていました。でも、打ち上げの帰り道で二人が手をつないでいらしたので『あ、夫婦なんだ』と思いました」(細田)
タイトルの意味は命の終わりを信ずる者に託すこと。愛ある決断を司法で裁けるものか?!と本作は疑問を投げかけることについて、周防監督が持論を述べた。
「尊厳死法は議員立法で成立が諮られているので、考えなくてはいけないと思います。法律はできてしまうと、『その法律に背かなければいいのか』ということにります。本作は司法での尊厳死がテーマ。法律で裁く前に『人としてどうなのか』ということが、どんどん抜け落ちてしまうんですね。だからこそ今、真剣な議論が沸き起こることを望んでいます」
原題=A TERMINAL TRUST
日本公開=2012年10月27日
配給=東宝
©2012フジテレビジョン 東宝 アルタミラピクチャーズ
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周防正行監督『カツベン!』で衝撃を与えたい
公式サイト www.tsuino-shintaku.jp