[シネママニエラ]名優デンゼル・ワシントンが主演映画『フライト』のプロモーション・ツアーで4年ぶり、5度目の来日を果たし、2月20日、ザ・リッツカールトン東京で記者会見を行った。前回『サブウェイ123/激突』の時は単身だったが、今回はロバート・ゼメキス監督、プロデューサーのウォルター・F・パークスとローリー・マクドナルド、4人揃っての来日だ。
「久しぶりに日本に戻って来れて嬉しいよ。特に、僕たち全員が誇りに思っているこの作品とともにというのはね」と笑顔で挨拶。4日後に出席する第85回アカデミー賞授賞式で主演男優賞にノミネートされているデンゼルは、「もし受賞したら、日本語でありがとうって言うよ!」と約束してくれた。
デンゼル・ワシントン来日「欠点を克服する努力が必要」と語る
軍人、刑事、弁護士、列車の運転士など、これまで実に様々なキャラクターを演じてきたデンゼル。今回初挑戦となるパイロット役で、リアリティを追求するためにデルタ航空の協力を得て、アトランタのフライト・シミュレーターでパイロットが実際に行う訓練をしたという。
「普通は2~3年かかるものを、僕らは2~3日位という非常に短い期間で体験したんだ。難しかったけど、とても楽しかった。わからないことはパイロットの経験が豊富なロブ(ゼメキス監督)に聞いたよ」
ウィトカー機長は墜落の危機に直面した航空機を緊急着陸させ、多数の乗客の命を救って一躍ヒーローとなる。だが血中からアルコールが検出され、状況は一転。枠に収まることができない多面性を持ち、特に弱さや脆さが際立つ非常に複雑なキャラクターだ。勿論これまでも内面を掘り下げた素晴らしい演技を見せてくれたが、今回のような人物は初めてではないだろうか。実際どんな役作りのアプローチをしたのか? 質問にこう答えている。
「とにかく脚本が素晴らしかった。脚本の中にすべての要素が入っていたので、描かれているウィトカ―の人物像――ジェットコースターのように起伏の激しい感情や、持っている様々な顔を、僕は忠実に演じた。今回はアドリブも一切する必要がなかった。事前にリサーチは、かなり行ったよ。航空機事故の歴史を調べたり、いろいろな人に話を聞いてね。役作りというのはひとつの方面だけでなく、いろんな角度からのアプローチがあると思うんだ」
ゼメキス監督とは初めてタッグを組んだ。監督は「デンゼルの演技には本当に驚かされたよ。彼の選択はすべて正しかった。私の演出など全く必要ないくらいにね」と賛辞をおくる。デンゼルのレスポンスは――。
「ロブは僕たちに常にとてもリラックスした環境を作ってくれた。だから不安を感じることもなかったし、本当に信頼できる関係を築けたんだ」
ところで作品中に登場するウィトカ―の“大酔っ払いシーン”は、真に迫っていてインパクトがある。“このシーンについて、目の前の水の入ったボトルを持って、ジェスチャーを交えながらコツを教えてくれた。
「酔った状態を頑張って演じようとすると無理がある。だからリラックスして、自分はすべてOKというフリをすることにしたんだ。例えば、一生懸命に泣こうすると上手く演じられないのと少し似た所があるかな」
自身の演技については、「これまでどの役も完全に掴んだという感覚を持ったことがない」という。誰が見ても完璧な演技だというのに。あくなき役への探究心とストイックな向き合い方。改めてその俳優としての信念と意識の高さに感嘆した。
「僕も含めて、人間は誰もが欠点を持っていると思う。でもそれを克服するように日々努力することが必要なんだ。『1日1日を精一杯生きようとする。日々努力を重ねて、ベストを尽くす。』僕はいつも、自分にそう言い聞かせているんだ」 とても説得力のある言葉だ。
なぜ彼の演技はこれほどまでに人々を惹きつけてやまないのか、わかった気がする。会見では終始ユーモアとサービス精神たっぷりに、周囲をリラックスさせてくれたデンゼル。「(数寄屋橋)次郎の寿司が食べたいな。誰か連れていってくれませんか」とも話していた。息子さんがドキュメンタリー映画『次郎は寿司の夢を見る』を観て、教えてくれたのだそうだ。実質2日間の短い滞在の後、アカデミー賞授賞式が開催されるLAに向けて<フライト>に出発した。(寄稿:丸山けいこ)
原題=FLIGHT
日本公開=2013年3月1日
配給=パラマウント ピクチャーズ ジャパン
©2012 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
映画『イコライザー2』はデンゼル・ワシントン初のシリーズ作品
公式サイト www.flight-movie.jp
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