映画『コンプライアンス 服従の心理』日本版ポスター

コンプライアンス 服従の心理/盲点をつき権力に服従させるには?

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コンプライアンス 服従の心理

[シネママニエラ] コンプライアンス 服従の心理/実在の事件を基に、善悪の判断を超えて、人はなぜ権力に服従してしまうのか人間の本質に迫っていく。


盲点をつき権力に服従させるには?

事実に基づくというだけで興味を抱かせる本作。キャッチは「賠償額6億円。訴えられたのは米大手ファストフード店。1本の電話で少女が裸にされた信じがたい事件」とある。内容はまさにそのままで、ミルグラム実験を加味し、善悪の判断を超えて、人はなぜ権力に服従してしまう人間の本質に迫っていく。

劇場で見ている段階で、そんなバカな!と思うだろう。でも、そんなのは今自分が騙される状況にはいなくて、安全であると確信できるからだ。この映画で再現されていることは、実際2004年に起きているのだ。しかも米国の30の州で、約70件の被害が明らかになっているそう。容疑者は38歳の男性、裁判では推定無罪ってことで自由の身になったとのこと。さらに余罪もあるかもしれないと思うとゾッとする。

さて、肝心な映画の話に戻る。店長として自信をもたなければ、部下を率いることは難しいということは理解できる。だが、この店長サンドラは自己過信していたと思う。最初の問題は在庫管理の問題。これも業者から「君では対処できない」と指摘されるも、「失礼な言い方」と憤慨している有様なのだから。あらゆることに通じることだろうけど、意思決定権は委ねずに、選択には覚悟を持つように心がけたい。

以前、ドイツ映画『es[エス]』では刑務所と看守という設定における心理実験が描かれたが、実は、本作で描かれるのは、ミルグラム実験にあたるそう。それが服従の心理を解いていく。電話口で犯人が語る「本部長の○○とも話をしてる」という言葉を鵜呑みにした店長。その店長が、部下に「警察(のダニエル)の指示に従って」と命令しているのだから副店長以下は業務命令となって言いなりになるしかない。

振り込め詐欺(母さん、助けて詐欺)にも言えることだけれども、リスク回避の手段を自分なりに考えていく必要がある時代に生きている。人情や義理もあるのだろうが、騙す側の人間はそういう良心に付け込む。こういうことを言う人がいる、「悪人は己の行為を悪と思っていないからバチが当たることはない」のだと。意思決定権は委ねずに、どのような時でも自分自身で、その選択に対する責任とリスクを覚悟して行うべきという教訓を教えてくれる。

【解説】コンプライアンスとは?
「法令遵守」のこと。倫理や社会規範にのっとって行動することを指す。
【解説】ミルグラム実験とは?
イェール大学心理学者S.ミルグラム(1933~1984)が行った、権威と服従の実験。組織に属する人はその組織の命令とあらば、通常は考えられない残酷行為に及ぶことを実証した。

原題=COMPLIANCE
日本公開=2013年6月29日
配給=アットエンタテインメント
公式サイト http://fukuju-shinri.com/
©2012 Bad Cop Bad Cop Film Productions, LLC

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