――審査委員賞受賞おめでとうございます。受賞後の反響はいかがですか? また、カンヌのパーティーで直接審査員の方々に感想を聞くことはできましたか?
帰国早々、空港の通路にカメラマンの方がいらっしゃったので、こういうことだなと実感しております(笑)。パーティーはあまり時間が無かったのですが、何人かとお話できました。スティーブン・スピルバーグさんは、『そして父になる』は映画祭の期間中なにかしらの賞から外そうと思ったことは無かったといってくれましたし、ニコール・キッドマンさんは上映を観て泣いていらっしゃったようで、心に届く話だし、女優の二人が特に素晴らしかったと話してくれました。作品を誉めていただけるのは大変光栄なことです。
今回のカンヌはコンペにタイプの違った2作品が選ばれているし、審査員にも河瀬直美さんが参加されているということもあり、例年よりも日本国内で注目されていたと思います。“日本”として映画祭との関係性を強く築いていくと作品を観てもらえるというステージに立てるので良いことだと思いますね。カンヌでは日本の作品というだけでなく、授賞式の舞台裏でジャ・ジャンクーやチャン・ツィーとアジアンパワーだなんて言って笑いあってましたが、そういうのが映画祭で味わえる嬉しい瞬間ですね。日本映画への注目が集まるのももちろん嬉しいですが、(映画祭への参加は)もっと広く映画に包まれていると感じることができて嬉しいです。
――同作主演の福山雅治さんは皆さんとお祝いしたいとコメントを寄せていましたが、直接連絡をとられましたか?
カンヌを発つ直前にメールが来ていて、忙しいなかコメントありがとうとメールを返したんだけど、彼のドラマが落ち着いたら皆で祝いたいと思います。
――映画祭では数多くの海外メディアの取材を受けられたと思いますが、そのなかで印象に残っている質問はありましたか?
現地では60媒体位の取材を受けました。印象に残っているのは記者の人たちが結構自分のことを話して帰るのが多いってことですね(笑)。それは海外の人たちのほうが、血縁でない子どもを育てるという機会に接することが多いからなんだなと思いました。作品を観ているうちに、自分のことや身近な出来事を投影しているんだなと、それが公式上映後の温かい拍手につながった一因かなと思います。
あとコンペ部門への出品は9年ぶりですが、その間4本作っていて多くがヨーロッパで公開していて、『奇跡』はイギリスでよい形で公開ができたり、多くの人が作品に触れてくれている、今までの作品を通して共有してくれているということも、温かい反応をいただけたことにつながってると思います。
――日本映画の大きな流れを映画祭で実感されましたか?
日本の映画というのは世界的にみても豊かな歴史があると思います。僕自身もデビューして以来ずっと、小津安二郎から受けた影響を聞かれることも多くて、はじめのころはあんまり観ていないし、影響もうけてませんなんて答えてたんですが、自分の中に流れている家族観や死生観は共通していて、日本人としての特異性を感じますね。それは大切なことだと思います。
――『誰も知らない』での受賞と今回の受賞で何か違いはありますか?
成田についたらYOUさんや、当時の演じてくれてた人たちから、“おめでとう”ってメールが入っていました。カンヌは何の賞をくれるか最後まで教えてくれないんですよ。前回はそんなことを考える余裕も無かったのですが、今回は少し賢くなって、カメラがこっちを向いていたので、俺かなと思ったんです。
『誰も知らない』では柳楽優弥くんが賞を取って良かったなと思っているんですが、今回はスピルバーグが名前を呼び上げてくれて、それだけで大満足といった感じでした。カンヌの賞は、優れた作品に与えるもので、どうしても賞を振り分けなければならないから、決して女優賞だったら女優だけが優れれたわけではなく、作品自体が優れていたということなんだと思います。
――少し気が早いかもしれませんが、賞をとられてからオファーが殺到していることだと思います。今後撮ってみたい作品や構想がありましたら教えて下さい。
オファーは殺到していないです(笑)。実現する、しないは別として構想は常に5、6本同時に走らせているんですね。今年はとにかく『そして父になる』に集中して、来年から具体的に考えていきたいと思います。今回、普段ならあまり接点の無い福山雅治さんとご一緒させていただき、彼が今まで見せたことの無い表情、彼の魅力をどうやって引き出そうということが刺激になりました。今回の取り組みは僕にとっても彼にとっても新鮮だったと思うし、僕自身楽しかったです。オファーは殺到していないので、何かありましたらぜひ(笑)。
英題=LIKE FATHER,LIKE SON
日本公開=2013年10月5日→2013年9月28日
配給=ギャガ
公式サイト
©2013『そして父になる』製作委員会
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