――蜘蛛が主人公の深層心理を象徴しているものだとして受け止めましたが。
蜘蛛が映画の雰囲気を作り出していると思う。冒頭からトロントの街を覆う大きな蜘蛛が現れて、この先何が待ち受けているか観客には知りようがないよね。映画のトーンを決定付ける重要な要素だよ。観る者は“この世界では何でもあり得るんだ。この先何が起きても、何が潜んでいてもおかしくないし、理解を超えたものかもしれない”と思わされるんだ。
人間の恐怖心に働きかける効果もあると思う。多くの映画の中で恐怖の対象として描かれるのは、追ってくる“何か”とか、ゴジラのような怪獣だけど、僕らはその恐怖の対象に対して決して動機を聞こうとはしない。大作アクション映画でも同じだよ。単純に迫ってくるという事実が恐怖なんだ。蜘蛛は多くの人が恐怖を抱く対象だけれど、あの蜘蛛はある大きな“?”としての存在だと思うんだ。あの蜘蛛は何かしら自分の中にある真実とか、向き合うべきもの、そういったものを表している気がする。
解釈は何通りもあると思うよ。もちろんアート作品などでも一般的な、母親像であるという解釈も出来るけど、この映画の場合はもっとこう…、僕らが恐れている、常にそばでうごめいてる真実のようなものに思えるんだ。でも実際に蜘蛛が及ぼす危険と蜘蛛のイメージが与える恐怖心を比べると、恐怖心の方が遥かに増長されているよね。確かに怖いし、実際に噛まれて命を落とす人もいるけど、本当の蜘蛛の存在よりもイメージで膨らんだ恐怖心の方が強い。頭の中で強大な何かとして作り上げてしまっているんだ。長くなったけど、映画の中の蜘蛛はそういったことかな。単純にクールなイメージでもあるしね。
R15+
日本公開=2014年7月18日
配給=クロックワークス、アルバトロス・フィルム
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